第8話

 俺がまだ少年だった頃。

 いわゆる発展途上国と呼ばれるような国に住んでいた。

 国土は狭いが穏やかな気候。

 のんびりとしたとても幸せそうな地域。

 その頃俺は先進国の都市がゴミゴミして嫌いだった。

 一生田舎暮らしでいい。インフラは十分と言えないがみんな平和を噛み締めていた。


 しかしある日を堺に、それは、豹変し始めた。


 俺の朝は常に毎回パンにジャムを付けて目玉焼きを食べながらニュースを見る。

 そしていつもどおり注目度ランキング一位のニュースを見る。

 ニュースには自国が崩壊したと書かれていた。

 

 どうやら革命と言う崇高な使命のため都市部の人たちは大勢で国家を転覆させたらしい。

 ハッキングし情報を遮断させ、物理隊と呼ばれる人々が王や高い地位の人たちを皆殺しにした。

 別にそんなに珍しいことではない。


 現に俺の住んでいた地域は略奪や取引によって何度も国が変わっている。

 そのせいか、住民は”この場所の誇りだけは忘れてはならない”と合言葉のようにつぶやいている。

 現に国家が転覆したその日、住民たちはいつもどおり仕事に勤しんでいた。


 しばらくして住民たちは住処を追われた。

 内戦だった。

 色んな国が介入し色んな派閥が戦っている。

 市長が皆を集め開いた集会では「この場所の誇りだけは忘れてはならない」と演説して皆が泣きながらうなずいた。


 そして皆国外へ逃げた。

 難民受け入れ先はいろいろあるが多くは自分で選べない。

 優遇される所、差別される所、死ぬ所。

 距離的な問題もあるがその多くは運に見だねるほか無い。

 その運ゲーで俺はババを引いてしまった。


 特に最悪と言われる受け入れ先、ベルカ共和国の東地区。

 そこは数十年前に終息した筈の伝染病や闇市、人身売買などスラム街よりひどいことになっていた。

 そこで俺は”生きるためには仕方ない”と、窃盗から殺人まで何でもやった。生きるために。


 俺たちはグループを作った。

 基本的に成人してない者たちで集まり、下は赤ん坊。上は18歳まで。皆、親を失い生きていくのに困難の仲間たちで集まり群れをなした。

 

 難民キャンプ地では難民以外のならず者や犯罪者たちが入り浸っていた。

 どんどん周りが死んでいく。

 そこで死なないようにするためには目立たないことだった。


 以前、難民同士で結成したギャングたちがいたが、自らを最強と名乗り他の者達を煽った。

 そのせいでギャングは皆殺しにされた。


 まあその御蔭でギャングたちの徴収が無くなったが、この事件のせいで、警察や軍までもが巡回し始めた。

 盗みを働いたものは全員、収容所送りにされた。入り浸っていた犯罪者も同様に。


 一見治安が良くなったように見えたがその後大飢饉が発生した。

 警察が監視し始めたことで違法な取引が行われずその経済が回らなくなった。

 犯罪者は外から食料を、難民は労働力を、それが主な稼ぎだった。両方において。


 それでもなんとか生きた。闇市は完全に消滅したわけではない。


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「xxx君ってカッコいいよね」

 眼の前の少女が言う。彼女の名はオリビア。この難民キャンプに来てからはじめての友人だった。グループを作って親のいない小さい子どもたちを養わせよう、と発案したのも彼女だ。


「俺なんてそんなかっこよくないよ」

 俺は彼女と近くの森で山菜を探している最中だった。


「そんなこと無いよ! xxx君はみんなの面倒見もいいし一番稼いでくれるのもxxx君なんだよ?」

「そんなん誰だってやればできるよ」

「まったく謙虚なんだからー」

 実際俺よりオリビアのほうがちびっこ達の面倒を見てて、彼女がいなければみんなで生きることができない程だ。俺なんか彼女の足元にも及ばない。


「私はxxx君に憧れるよ」

「そんな憧れないで」

「…そういえばxxx君に私の将来のこと話したっけ?」

「え? 俺聞いてないと思うけど」


「私ね、将来”おろかもの”になりたいんだ。」

「愚か者って何?」

「最強のカードでね、どんなカードにも勝て無いの。たまに最弱になるけど」

「…それは愚か者じゃなくて愚者ぐしゃだよ。それにトランプとタロットが混ざってない?」

「あれぇー?」


 俺はオリビアの事が好きだった。

 でもいろんな事が終わってから告白しようと思ってた。


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「ハイこれで第一部は終わりです刑事さん」

「お前の情報を教えてくれといったが伝記風に語らなくてもいいんだが… お前の好きな娘の話とかどうでもいいし」

「伏線だから仕方が無いですよー、刑事さーん」

「だから物語風に語らなくていいって」

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