Epilogue
「…………ん」
時計を見ると、午前六時三十分。いつもより三十分も早く目覚めてしまった。
……まあ、彼の会社の倒産と同時に私の職もなくなっているのだが。
「今日は……あれ?」
見れば、日付が数日飛んでいる。
試しにテレビを付けてみると……やはり、日付が飛んでいる。
気のせい? いや、そんなはずはない。
この数日間の記憶が――きれいさっぱり無くなっている。
「…………どういう、こと?」
ぼんやりとニュースを見ていると……とある、ニュースが出てきた。
それを見た瞬間、
「うっ」
ズキッと頭が痛み――そして、思い出されるのは一つの光景。
血だまりに倒れる、吉村耕平の姿。
「――――ッ!?」
なぜか、分からない。
だけど、確信がある。
私は、この手で――吉村耕平を殺した。
「え……?」
その時、私のスマホが振動した。メールが来たようだ。
あの人が亡くなって以来よくこうしてメールが届く。今日のそれもその一環だろうと思い開くと――
『FROM:JACK
件名:あなたの依頼、完了いたしました
本文:谷津鏡花さん、貴女の復讐は無事完遂いたしました。お代として貴女の全財産を頂きました。ただ今回の御依頼の必要経費は回収できましたので、命とマンションだけは残してあります。残りの人生に――良い復讐があらんことを』
――なんて、メールが届いていて。
追記として『記憶の一部は削除させていただいております。ご容赦ください』と書いてあったが……。
(ああ……)
私は、復讐を遂げたのだ。
なんだか、薄らぼんやりとそのことを覚えている。
自分が狂気に支配され――引き金を引いたことを。
だけどどうしてだろう、不思議と心が晴れている。
「純一郎さん……」
復讐を遂げたからだろうか、それとも――他に何か要因があったんだろうか。
いや、その要因は分かっている。
何故なら――流れてくるニュースで。
吉村耕平の持つ会社全てが倒産したと言っているからだ。
彼の全てが、今日、無くなった。
「……ありがとう」
名も知らない『復讐者』さん。
JACK~貴方は人生を捨てる覚悟がありますか?~ 逢神天景 @wanpanman
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