第二章 初夜の戸惑い
(いよいよだ。初対面とはいえ、妻らしくしないと!)
そう思いながら、楓はドアを開けた。
「正俊様、失礼します」
部屋の中に入ると、ベッドの上で正俊が読書をしていた。
(趣味は読書なのかしら?だとしら、たくさんのこと知ってそうな感じ…)
パタンと静かに本を閉じた正俊は、部屋の明かりを少し暗くした。
正俊と楓はベッドで隣同士になった。
「あの…」
「初対面の女を抱く興味はない」
正俊がそう言うと、くるりと顔を後ろに向けた。
正俊に冷たい言葉を言われ、どうして良いのか楓には分からなかった。
冷たさに包まれた静かな夜を二人は過ごした。
翌朝、楓はいつもより早めに起きた。
「楓様、おはようございます」
「おはよう、葵」
「昨日はお疲れ様でした。初対面とはいえ、本当に夫婦のようです」
にこやかに微笑む葵の顔を見て、楓は少し心痛かった。
「葵、ごめんね」
楓は葵の両手を自分の両手に包み込んだ。
「どうかなさいましたか?」
「…ううん、なんでもないわ」
自分の幸せを誰よりも願っていた侍女に申し訳ないと思った。
「ちょっとうまくいなかっただけよ」
「そうですか。何か心配事でもありましたら、言ってくださいね」
「うん、分かったわ。ありがとう」
楓がそう言った後、正俊のいる所に向かった。
「正俊様、昨日はもう訳ありませんでした」
楓は深くお辞儀をしたが、正俊は無言だった。
(こんなこと言われても困るな。俺はただお前を傷つけたくないだけだ)
正俊は心の中でそう思いながら、楓を見つめた。
(どうしてなの?私は正俊様の傍にいたいだけなのに…)
楓は少し辛そうに正俊を見つめ、その場から去った。
「秘密を知ったら、受け入れてくれるだろうか…」
正俊は窓側に映る空を見ながら、悲しく嘆きんだ。
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