最終回!
やや強引な引きでまさかの2週に渡ってしまったが、俺達の方ではもちろん1週間も空いたりしていないので安心してほしい。
って俺は一体誰に何を説明しているのだ。
~先週のあらすじ~
何やかんやで敵の親玉が登場し、シゲル君のお姉さんを
それに怒ったシゲル君は果敢にも親玉へと向かっていくのだが……?!
そう、それで、だ。
ヒーローとして覚醒するための条件が何たらかんたらって話だった。
そう、仮に君が、だ。
素手で下っぱ戦闘員のみならず、何なら怪人クラスとまともにやりあえるくらいの戦闘力があったとしても、
容姿の方もモデル事務所からスカウトされるくらいに申し分なかったとしても、
その条件が
まぁ、何だ、つまり。
名前である。
ここで勘違いしてほしくないのは、恰好良い名前であれば良いってもんじゃない、という点だ。
だって俺も『セイジ』なんてカタカナ表記にしてるけど、これ正式には『清二』だから。思いっきり次男ってバレる感じのチョイス。もちろん兄はいる。
ポイントはそこじゃない。別に『アキラ』とか『シン』とかじゃなくても良い。ていうか『アキラ』や『シン』だってさ、もしかしたら『昭』と『進』かもしれないわけじゃん。いや、その漢字が駄目っていうんじゃないけど。
少々乱暴に言っちゃうと、下の名前の方は『田吾作』とか『ゴンザレス太郎』とかもう振り切った感じじゃなければ、ぶっちゃけ何でも良い。俺みたいにカタカナに逃げる手もあるからだ。
重要なのは苗字の方である。
さらにいえば、既に登場しているヒーローとの関連性が最重要ポイントとなる。
今回の場合でいうと、『既に登場しているヒーロー=俺』なわけだから、俺の『龍ヶ崎』にどう関わってくるか、だ。
案その1:○ヶ崎でそろえる
→まぁなくはないだろう。5人くらい集まれば『ガサキーズ』なんてチーム名で動けるかもしれない。くそダサいのがネック。
案その2:龍でそろえる(九頭龍とか)
→正直これはない。モチーフが確実に被るだろうし、それに伴って必殺技なんかも全被りする危険性がある。
案その3:伝説の生き物系でそろえる
→ぶっちゃけこれが一番熱い。各々の個性を出しやすく、色が被る危険性もないからだ。
もうそろそろ時間もアレなんで正解を言っちゃうけれども、シゲル君の本名は『天馬詩蹴』というのである。
今回、俺が『龍ヶ崎』なのでこんな感じになったが、仮に色名が入っていた場合、色の漢字が含まれている苗字のヤツがいればそいつは確実に追加ヒーロー候補である。
……というわけで。
はい、キタ。
これはもうキタ。
俺が龍で、彼が天馬。
まぁ色は白か青になるのかな。
そうだなぁ俺が炎だからなぁ。となると、水? うーんでも天馬ったらペガサスなわけだろ? 名前はとりあえず俺がドラゴンレッドだから、ペガサスホワイトあるいはペガサスブルー。ホワイトだとちょっと雪っぽい感じになるなぁ。ペガサスって雪と関係なくね? って言っちゃうと水っぽい感じでもないけど。 ぶっちゃけアレなんだよな、ペガサスってあんまり戦闘向きな感じがないっていうか。あー、言っちゃった。いや、でもさ、そう思わない? 移動手段&癒し、みたいな。
だから正直そんな『ペガサス何か』予定の彼がね、ごつごつと正拳突きしてるのがちょっと既にキャラがおかしくなってるっていうか。え? あれ? ヒドーちょっと大丈夫? バリア破れて背中丸めちゃってるけど? っていうか、え? タマコさん? タマコさん何やってんの? 上段蹴りがすっごいきれいっすね。いやぁびっくりもう。ていうか何? 自力で脱出出来たの? 出来るんだそういうの? 縄抜けの心得がある? へーすっごい。それね、もう一般人じゃない。最早君達一般人じゃない。
何だろう、もう嫌な予感しかしない。
何って、この姉弟の動きがもう完全に素人じゃないのね。
何、シゲル君。君ただの小太りかと思ってたけど、柔道とか空手とかやってたよね、確実に。
そんで何、タマコさん。あなたはもうあれだね、疑いようのないくらいに師範代クラス。何なら俺が教えを乞いたいくらい。
あとね、この2人ね、ちょっと身体が光って来たんだよね。
何ていうのかな――……、うん、新たな力を手に入れる系の? 俺でいうところの古の伝説の龍的なポジションのヤツ(この2人の場合はペガサスになるんだろう)が、目を付けました的な、そんな演出ね。ただいまヒーローとしての資質を審査中。この審査に通れば、こちらの意思などほぼほぼノー尊重で正義の味方としての力を授けられてしまうのだ。
あ――……、もうこれ、アレだ。
ヒドー虫の息だ。
俺の出る幕ないわ。
何だよ、この姉弟。
2対1とかちょっと卑怯じゃね? いま初めて敵に同情したわ。まぁ、いっつも俺は複数の相手と戦っては来たが、そいつら軒並み雑魚だったしさ。こんな首領をぼこぼこに出来るヤツ2人とかヤバいでしょ。
ああもうほら、審査完了したもん。お眼鏡に適ったもん。うっわやっぱペガサスって美しいっすわ。
いや、別に俺の龍がそうでもないとかそういう意味じゃないから。いててて……焼きもち焼くな、ブレスで手首締め付けんなって。千切れる! お前が本気でやったら案外簡単に千切れるから止めろ!
あ――……、あぁ、成る程成る程。ペガサスツインズ、ね。そういうチーム名になったのね、お2人さん。
個人名は? はぁ、タマコさんがペガサスホワイトで? シゲル君がペガサスブルー、と。ふんふん、なぁーるほど。はいもう良くわかりました。
――え? 何? この町のことは私達に任せてくださいって? うん、そうですね、そりゃ地元民の方が何かと都合が良いでしょうしね。いや、何だろ、別にそういうのって俺が決めることじゃないっていうか。えぇ、縄張りとかね、そういうのがあるわけじゃないですから。あとはもうお任せしますんでね。
俺? 俺は……そうですねぇ……、まぁ流れ者なんで、別のトコ行きますから。良いです良いです、そんな頭下げなくても。ね? ヒーローは多い方がやっぱり良いですから。もうほんとお気になさらず。あ、もう、はい、そろそろ行きますんで。じゃ、本当に、はい、もうこの辺で。
俺の名前は龍ヶ崎セイジ。
まぁいわゆる正義の味方ってやつだ。
ただ、正義の味方といっても、悲しいことに俺は孤高のヒーロー。現実的に考えて、守れるのはごく狭い地域のみである。ある意味ご当地ヒーローと言っても過言ではない。しかし、この町はもう大丈夫だ。正拳突きと上段蹴りで悪の組織の首領を沈められるほどのヒーロー&ヒロインがここに誕生した。
ヒーローは過程にこだわらない。
結果としてこの地を――ひいてはこの地球を守れればそれで良いのである。
俺はそんなことを思いながら、井川さくら町を後にした。
ヒーロー見参! 宇部 松清 @NiKaNa_DaDa
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