第7節 ③
「僕は――」
突如、
「いいよいいヨ。出るといイ」
「……すいません」
ヴェイラーは劫に ケータイの通話ボタンを押すと、
『もしもーし! やっほーコーちゃん! 聞こえてるかしら? 聞こえてるわね!』
やたらテンションの高い女性の声と、風と波の音が
「……センセイ。旅行はもういいんですか?」
『まーねー! 今帰ってるところよ! いやーたまには船もいいものね! お土産もたくさん買ったから楽しみにしてなさい!』
センセイの声を聞くのは久しぶりだが、それでもテンションが高く掴みどころがないのは変わりなかった。そんなセンセイの様子を通話越しに感じ取り、
『あの、センセイ……! 電話するなら船内のほうが……!』
どうやら
『えー? なんてでー?』
『外で電話なんてしたら、危ないですよ……! ケータイを落としたりなんかしたら――!』
『さっちゃんは心配性ねー。そんな馬鹿なことアタシがするわけないじゃな――うわ船揺れた! ってア! ケータイ滑』
『ちょ、なにやってるんですかセン』
ボチャン。ザブンゴボゴボ。そしてブツン。
それが通話先から聞こえた音だった。
「……………………」
「ハッハ、その表情からするとティーチャーレディからの電話だネ? そして、ケータイを落として像に踏み潰されたとかそんなことをやらかしたんだろウ?」
「……もっとアホなことしてましたよ」
「ハッハー! そうカ! 全くあのレディはワタシの推理の上を行く愚かを持っているネ!」
ヴェイラーの指摘と忠告は尤もだ。
自分の役割を捨てて、けど属性はそのままで、ただ人工変異型の
けれど、この事務所にいる間は自分がまだ自分でいられる気がする。
――ああ。だからだろう。
それがきっと、
ミュータント・ブラッド・ゼロ 玖音ほずみ @juvenilia
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。ミュータント・ブラッド・ゼロの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます