第5話 妹の劣等感

姉と一緒に出掛けるのは何も珍しい事ではなかった。


今までだって当然のように買い物にも行ったし、遊びにだって行った。

もちろん私主導で。


ただ姉が高校へと進学し時間が合わなくなったおかげで4月に入って今日まで一緒に何処かへ行くということが無かっただけだ。


でも…いや、だからこそ思い知らされる。


姉は基本怠惰だしインドア派だから起きたら家から一歩も出ないのがデフォ。なのに…なのに…


改札を下りて人が行き交う隙間を二人して通り抜ける。

道行く人という人が姉を視界に入れている。


そう、妹の私が言うのも何だが姉はそこらの芸能人なんかよりもよっぽど顔やスタイルが良いのだ。


両親譲りの長身にスラッと長い手足、均整の取れた身体付きと…もはや恨みがましいを通り越して腹が立つ勢いだ。そして、ぐうたらな癖にやけにウエストが引き締まってるおかげで胸の大きさが強調されてる。何これくやしい!


そりゃあ昔お父さんに空手教えて貰ってたから筋肉質なのは分かるけどそれにしたって不公平じゃなかろうか?


私だって同じ血をひいてるのに運動しなかったら直ぐに太っちゃうし、身長だってお姉ちゃんの方が上。それに顔だってお姉ちゃんの方が何倍も綺麗だ。私は何処までいっても子供っぽいっていうか…いやいや当たり前だけど。


…本当にこの人は無自覚というか何というか。


ジムに入った瞬間に集めた視線なんか気にしちゃいないんだろうな。受付のお姉さんだって綺麗なのに霞んでるもん。あれは心の中で舌打ちしてるに違いない。


久しぶりに一緒に歩いたけど…ちょっと劣等感感じちゃうな。


…毛色が違うっていうかさ。


 「楓、何してんの。早く着替えに行くわよ!」


さっきまでやる気なかった癖にこれだからなあ…。

変な所で子供っぽいっていうか


ま、そこがお姉ちゃんの良い所でもあるんだけど。


 「ちょっと待ってよお姉ちゃん!」


私は小走りに姉を追いかける。


何となくだが背中を小突いてやりたい私がいた。

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