第3話 午前の休日
「あっつー………」
ゴールデンウィーク三日目。
五月とは到底思えない暑さの中、ソファにだらしなく座ってアイスの棒を口でピコピコ動かす。
始めっから暇を持て余してダラダラするのが唯一の予定であり楽しみでもあったのだが、このクソ暑い中ではその楽しみも半減である。
目の前にデカデカと映し出されているテレビ映像からも、連日連夜で続くこの異常な猛暑のニュースで盛り上がっている。
私も始めこそは興味津々で聞いていたが、こう毎日続けられては飽きるし、何より肉体的にもキツい。エアコンは好きじゃないし、だからといって扇風機を出しても直ぐに梅雨に突入していらなくなるので、わざわざ押入れから引っ張り出すのも憚られた。
「学校が無いのは嬉しいけど、さすがに暇になってきたなあ……」
ボヤきながらテレビのチャンネルを変えてみる。
時刻は午前九時前。
この時間帯でやってるものといえばワイドショーやら昔のアニメの再放送ばかりだ。
暇過ぎて変えては見たが、わかっていた結果だけに結局録にテレビに向き合うことはせずに、電源を落とした。
リモコンを近くに放って、むさ苦しい暑さの中、嫌な温かみに包まれつつあるソファから少しだけ移動すると、携帯を机から拾いメールを確認する。そこには部活の日程と活動時間が示されていた。
予定表によると、活動するのは明日。つまり四日目である。
依頼書をよく見ていなかった始めは初日から行うものだと思っていただけに嬉しい誤算ではあったが、こう一日一日、確実に完全休日じゃ無くなる日が近づいてくると段々嫌気が差してくる。
暇は暇で窮屈と感じるが実際外に出るよりかは何倍もマシだ。しかも、追い打ちをかけるようなこの暑さである。出不精がもっと出不精になっても致し方ないし、明日で休日も終わりだ。この暇な休日が明日にあればきっと尊いものになってるはず。
「………っ~~~」
軽い欠伸をすると私はソファに寝転んだ。
暇だ暇だと言ってはみたが、贅沢すぎる悩みというのに気付いたからだ。どうせなら一日中ダラダラして、外に出たくてしょうがないってぐらいにした方がやる気が出る。突き詰めていけば、これは明日のためなのだ。すべてを否定された私が仕事のために今日を潰すとか凄い成長ぶりである。これは推薦確実で良い夢が見れそうだ。
私は、頭を動かして丁度良いポジションを探し終えると、お昼寝ならぬ、お朝寝を開始することにした。それではみなさん、おやすみなさい。
「ねえ邪魔!邪魔だから早く起きてっ!」
「っうぐ!」
目を瞑って数秒。
怒声と共にやってきた腹を襲う激痛に、つい嗚咽がもれる。女の子らしくない声が出てしまったことに恥じらいつつ目を開けると、最早見飽きたポニーテール姿の女子、楓が足で腹筋を貫いてきていた。
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