見るものを圧倒するような文章に、あっと驚く展開。第一章にして衝撃的などんでん返しを何度も仕込む卓越した構成力には度肝を抜かれた。作者氏はきっと、人の驚く顔を見るのが好きな悪戯者なのだろう。本編全体に張り巡らされた巧妙な伏線や、何処か壊れた登場人物たちの抱える歪んだ願望。破綻しているようでいて、奇妙なバランスで成り立っている独特な作品世界に酔わされること必至だ。
本作は悪魔と人間のバディによる異能バトルものの体裁を取りつつも、ミステリーのような伏線回収や、純文学めいた登場人物の内面描写が盛り込まれることで、作品世界に屈折した奥行きを持たせることにも成功している。能力バトルものの醍醐味である、誰が退場するか分からないサスペンスも、序盤にして十二分に発揮されている。
視点切り替えの多用や、急速すぎる展開、よく言えば特徴的、悪く言えば倒錯的な女性キャラの描き方には賛否ありそうだが、巷によくあるネット小説に食傷気味な方は是非一読してみて欲しい。私は大変好みでした。最終局面ということで、本作の結末を見届けられるのが今から楽しみです。
悪魔は囁く。「君の願いを叶えよう」
運命はその瞬間から、崩れ出す――
悪魔との取引に応じたことで、青年達の日常は崩れ去る。
その運命が招く結末は、Desire(大望)の成就か終局のDisaster(破滅)か。
運命に殉じる者。
宿命に抗う者。
運命とは酷く残酷に、彼らの願いを歪めていく
「どうしても叶えたい、叶わければ死んでもいい、その位の強い願いを持った人間にしか悪魔は見えない。君には必ず強い願いがある筈だよ」
運命は、悪魔が見えた瞬間から――
『Desire/Disaster』……
好評、連載中……。
というわけで、ちょっとCMっぽく決めてみましたが、文才に溢れた物語となっております。狂いゆく、もしくは進んでいく運命の歯車。その回る様を心行くまで、御愉しみください。
既視感があったのは、序章だけだった。どこまで知識を蓄え、構成を考えれば、こんなに鮮やかに人間関係や、人間と悪魔の関係を操ることができるのか。そしてここまで複雑な物を書きながらも、破綻しない作者様の技量に驚かされる。
設定は既存のモノに似ている。13人の選ばれた人間が、魔導書によって契約した13の悪魔と、神の座を巡って戦う。ここで特記すべきは、契約した段階で人間の1つの願いは叶えてもらえるということだ。さらに、悪魔との契約は3段階まで強化することができ、これによって人間は特殊能力を強化できる。
ここまで書けばお分かりの通り、戦いのメインは、悪魔と契約した人間の方である。そこに、契約した悪魔の階位が関係して、戦闘時にこれらが絡まり合って展開される。さらに、契約者同士が同盟を結んだり、同じ家の者だったり、同じ学校の生徒だったり、と人間関係もこの物語の面白さの肝となっている。
あまり神の座に興味がなかった人間たちが、話の展開に合わせて神の座に至ろうとする様も、無理なく書ききっている。特に、「ゲームマスター」的な少女(現在の神)が、人間たちを集めたり、情報を与えたり、イレギュラーの人間を参加させたりする上、意味深な発言も多い。
異能力バトル好きな方はもちろん、頭脳戦が好きな方にもお勧めしたい作品。
さて、これから彼らはどうなっていくのか?
物語はどう展開されるのか?
是非、ご一読ください!