リセットⅡ

夢を見た。


今から2カ月の夏。俺は広い高原の端に立ち尽くしていた。周りは、楽しく、嬉しそうに、戯言がとびかかる。


羨ましい。楽しそう。そう思う気持ちも心の隅っこにあるのも確か。けど、俺はそんな同情の塊、偽りな関係など必要ないと...そう、考えてる。

決して、濃密な関係が欲しいって訳ではないただ単純に俺が、周りが、僕に頼れる。そう、正義みたいな人になりたかった。

だから余計俺を省いて周りだけが楽しくなっているのが許せなかった。当然こんな性格だから中学校、高校と共に親友といえる友達なんていなかった。


いや、正義になろうと頑張ったこともある。ゲーム、スポーツ、勉強。けど努力したところで俺よりもっと努力を、才能で勝ち上ってる人なんて数えたらキリがない。

そこで分かったんだ。いかに自分が普通で凡人で低能な存在なんだろうと..

抵抗もした認めることができないから。だから、そのために励んだが結果は変わらなった。いいえ、自分が変わるということは相手も変わるっていうことなんだ。


電車を想像してくれ。先に出発した電車を追いつくために10分遅れでスタートする電車のようなものだ。当然最大スピードの制限は決められてる。

追いつける方法としては、相手が休憩、事故、死のどれかが無い限り抜かすことはできないんだ。


わかったんだ。などで片付けれらる世界なんて存在しないと。そもそも、その種目に対し特技やプロなど生まれてからもう既に決まってるんだ。

自分がやってきたスポーツや勉強、すべてそうだった。

陸上に関しては、父、母、共に全国大会出場、更には難関大学を卒業。バスケも水泳も剣道もサッカーも自転車も...勉強も。そんな血を相手に凡人が勝てるか?


答えは NOだ。 当然だよな。勝てる気持ちが大切?努力?なんて言ってる奴は本当に努力したことあるのか?練習で足を壊したことをあるか?正義を貫くためにすべてをそれに捧げることができるか?


こんな同情、応援をされるくらいなら友達なんていらないって。世界なんていらないって。


いつからだろうか。忘れてしまった。テレビや新聞を見なくなったのは....


だから、そんな自分だけ取り残されて周りが楽しむことに俺は不快を感じる。


そんな、過去の記憶をを思い出した。



光を感じた。瞼にのしかかる重圧を感じながらゆっくりと開く世界。歪んだ世界がちらつきなが窓を見上げると外は暗くなっていた。


「ああ、寝てたのかと...」零れ落ちたこえ。ゆっくりと体を起こし周りを見渡す..そういえば、朝であった彼女はここにはいない。もしかしたら、ただの夢だったのではないのか。けど、右手に少し違和感を感じた。よく見ると右手首にブレスレットのような装飾品が掛けてあった。


「なんだ、これ」


ブレスレットに触れようと手を伸ばした。すると、ブレスレットは手が触れたところだけ液体化になってしまった。零れることは無く。カールを保ったまま言葉通り手が触れたところだけ液体になり触れてないところは固体のまま。


「つまり、このブレスレットは外すことができないってことですか。なんだ、夢ではなかったのか。とほほ」


手以外ならいけるのか?少し試してみるか。近くにあったペンを取り出して再び接触してみる。


サァ~サァ~


触れることはできたが、想像をしていた金属音ではなく海が押し寄せるせせらぎが微かにきこえてきた。


「気のせいか」


そうこうしてると玄関のドアから「コン、コン」と騒ぐ少女の声が聞こえてきた。自分で開けれるだろうと思ってたが、どうやら俺が開かないと泣き止まないらしい。

そういうシステムですかね。それとも、あれか新手な…と愚痴をこぼしながら玄関まで足を運びドアを開いた。


「お前、わざとか?」

「わざとではありません」

「根拠は?」

「それより、近くのスーパーにカニが300円で売られてあったので買ってきました、あとあとこの服も、あっ、忘れてたこれ通帳」

急に何言ってるんだ、さっぱりわからないぞと言わんばかりのガトリングにあたまを悩ませながらもその通帳に手を伸ばし中身を確認した。

俺のじゃなくても、そいつの金が無くなった哀れな奴を見届ける義務は・・


「って、これ俺の通帳じゃねーーーーかよ」


おいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおい。嘘だろ、おい。何があなたを幸福にしますだよ。これじゃ逆だよ。実はあれか俺が幸福にするんじゃなくて、お前が幸福にする。つまり、俺ではなく彼を幸福状態に保っていけば俺が死ぬことがないって使用だろう。おいやっべーーよ。

でも待てよ、彼ならなぜそうしたのかきっと理由があるはずだ「なぁ、これどうやって通帳を手に入れた」


「えっ、あー。あの後あなたのお母さんが来て困惑してたから事情を簡単に説明したら。「「なんだ、そんなことなの?少ないけどこれ使っていいよ」」と言ってもわった」

「ほ?」

彼女もつられて首を傾げながらそう言った。

「ほ?」

「ほ?じゃなくて。これ俺の金なんだよ。あああああどうしよう次のコミケでいろいろなアイテム作ろうと金貯めてたのに」

「ダメだった?そしたらこれ今すぐうって」

「いい。売らなくていい。そもそも、服もないし靴もないどの道買うつもりでいたからどのみち結果オーライだ。あぁこれも計算のうちだ」

「空、足震えてるよ」


そのあとはいつもと変わらない食事に風呂、布団をしいて気づいたら電気を切っていた。


あっ、そうだブレスレットについてきいてねェと思ったけど今日はいろいろ疲れたしさっき寝たのにまた眠くなって・・・・・

って、だめだろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお

「うるさいよ、今何時だと思ってるの?」

「それどころじゃねーよ、今何時だ。時計、時計」

布団から飛び出て、まるで脱出ボタンでもおしてんではないかと言うくらいの反射神経。荒い着替えをしながら時計を探して着替えるが、同時に時計を見つけ一旦頭を整理して再び見つめなおすと日付は過ぎてて5/13日の26時を回っていた。


「あーーーー終わった。はぁ」


脱力感とはこんな感じなんだろうな。忘れてた。


「どうしたの?」

「俺、それなりに寝坊でバイトを欠席することが多かったんだよ。それで、もし次休んだらクビねと宣告され、今日、この日をもって俺は…いや、電話を通して」


結果、ダメでした。

無事ニートに昇格した20歳。おめでとう、おめどう


「よくねーーーーよ、めでたくないよ!!」

そんな中、彼女が冷夏がかしこまった顔でこう言った。

「お金が欲しいの?」

「そうだよ、貯金はお前がすべて使っちまったからおれは今貯金も手持ちも少ないまま今月を乗り切らないと死んじまう…」

「・・・・・。言ってなかった?」

「何がと言いたいところだが一旦電気をつけたい」

そういって電気をつけ、布団の上に胡坐をかぎ待機した。

「そのブレスレットは実はクレジットカードの役割があるの。けど、この世界のクレジットカードとは違くて貢献度。つまり、その人が今後どのくらい稼げるか、社会に貢献できるかによって上限が決まるの。契約とは違くて今度はその人の貢献度によって変動がある。」

「ちなみに、俺はいくらまで」

「少し待って、まだ話は終わってない」

息を整え、布団にくるまりながらこう言った。

「貢献度には3つのシステムに分かれるの。社会的貢献度、福祉的貢献度、娯楽的貢献度の三種が存在して。文字通り、その貢献度により得られるだろう上限が限られてくるわ」

「そして、この世界のクレカとは違くて、限度を超えない限りお金を払う必要はないです。持ち金又、貯金額と思ってちょうだい」

「あぁ、わかった。それで俺はどの貢献度に属して、どのくらいの限度まで許される?それとそれは一生の間だけの金額限度なのか?月で変わったりはしないのか」

と疑問を抱えながらもそう答えた。そしたら、少し笑った声で冷夏がこういった。

「限度変更は月によって更新される。そのブレスレットは真ん中にあるコア以外に触れると液体になるシステムで自分ではハズスことができないようになっている。

そしてコアに触れると、あなたの属してる貢献度又、最大限度額までちゃんと書かれているわ。」

(コア?ってこれのことか..ちょっと触れてみるか)

俺は我慢することが苦手なので人の話の途中でも平気で作業ができる体質だ。

「ちょ、なに」

刹那、声が聞こえてきた。

「ようこそ、安心幸福委員会サポートへ。今回はどのようなご用件でお持ちですか?」

「俺がどの貢献度に属してるか、限度額はいくらまでなのか教えてくれ」

「かしこまりました。確認をとってみます。コアの中心に親指を置いてください指紋認証を取ります」

「確認が取れました」「あなたの属してる貢献度が娯楽的貢献度。月限度額50万ほどになります。」

ほっとした声で「これだけあれば十分だろ、安心した」

「何安心したってこれあなたの37年分を売りさばいて今後稼げるだろうっていう貢献度だよ?」

「そうだな。けど今はお前がいる。そのためのサポーターだろ?」

「ふん、しらない」

安心幸福委員会サポータが空気を読んだのか、静かになった事ろで声をかけてきた。

「幸福者ほかに知りたいことなどありませんか?」

「そうだな、今はない。お疲れ様」

「かしこまりました。」

そういって、声が聞こえなくなった。まぁ、とりあえず分かったことは俺は今現状のままでいいってこと。つまり、働かなくていいってことだろ?

いいのか、わるいのか良くわからないけど。

「まぁ、それだけ理解できれば...時間もあるし今から進んでいっても遅くないか。」


5:00時


「寝るか」

冷夏に尋ねてみたが彼はとっくに寝ていたらしい。


「そうだよな、寝てるよな」

電気を切って、布団に潜る。

けど少し嬉しかった...だから、今度こそ逃したくない。絶対に掴み取る。もがいてもがいて昇りつめてやる...

俺は努力が嫌いだ。努力というものはするものじゃない楽しむもんだ。いつから努力を好きになったのかは忘れた。けど、それを変えてくれた人がいた。今度は俺が彼に恩返しする番だ。負けない。挫けない。それが俺の使命だから。


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貴方を幸福にするために来ました。すみませんが、寿命を売って頂いていけないでしょうか? あんるい @ank1025

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