プロローグ2 過去そして初めての出会い。

 川に流され意識を失った俺は走馬灯を見た。前の世界の記憶だ。


 幼稚園、小学校低学年では俺と幼馴染の男の二人で学年を仕切っていた。二人とも勉強、運動共にでき、見た目もよかった。よかったのはそこまでで、そこからだんだんと幼馴染とは差が出るようになった。


 俺は調子に乗って何もしなかったら、幼馴染がどんどん先に行ってしまった。同じスポーツクラブに通っていたがそこで差が出て、勉強でも次の学年の勉強などに手を出していたりして差が浮き彫りになっていった。


 周りもそんな俺に気づき始めたのか、段々と俺についてくる人は少なくなっていった。


 それを挽回しようと、5年生のとき小学校全体での行事があり実行委員長になった。そこの始まりのあいさつのとき緊張のせいで何を言うか忘れてしまい黙り込んでしまった。


 それまで、幼馴染にしか負けたことのなかった俺はプライドが高く自身の塊のような性格だったのだが、完全に自信を無くし、プライドもボロボロになり人前に出ることもなくなっていった。


 6年生になるといじめが始まった。誰にもばれないような陰湿なものや、小学生特有の悪意のないいじめだ。この時いじめてきたやつらは、もともとカースト1位で俺たちが来たことで2位なったやつらなのだろう。幼稚園が俺らは私立で小学校に入ると同時にカースト1位になったので気に食わなかったのだろう。


 男子は誰もいないところで悪口や暴力をふるい、女子は俺を視界に入れるとちらちらとこっちを見て俺な話をしだしてはくすくすと笑う。


 そんな状況になると、ますます俺は孤独になった。誰も助けてくれなかったこともショックだった。幼馴染にはクラスが分かれていたこともあり、今の状況が知られないように全力を尽くした。


 そして俺は中学受験をして逃げるように今の環境を去った。


 中学では、人間不信になりかけていたので表面上では取り繕いうまくやっていった。その結果誰も親しい友達もできずに勉強をするだけで卒業に至った。


 高校は中学では勉強ばっかしていたおかげで難なく県内一の進学校に入ることができた。幼馴染とはそこで再会できたが彼にも新しい人間関係が築かれていてそこに入ることはかなわなかった。


 その頃から、つらい現実から目を背けるためにラノベに手を伸ばし始めた。もともと小学生の頃から読書が好きで本は読んでいたがラノベは嫌煙していた。しかし読んでみるとその世界に引き込まれた。主人公は一般の学生から“特別”な存在になっていたのだから。


 しかし、主人公になり“特別”な存在には読んでいるときにしかなれない。そう気づき、ずっと読んでいるようになった、気が付くと学年一桁だった成績がワースト争いをするようになっていた。


 漠然と子供のころから一流大学に行くことを考えていた俺は高2の秋に現実につき戻された。


 そこから、どう考えても今のままだとどんなに努力しても一流大学は無理だと悟った俺は、無駄なものをすべてそぎ落とした。学校、人間関係、など。その結果高3の秋には合格ラインに届き心に余裕ができてきた。


 高校の卒業資格も取っていた俺は、約一年ぶりに遊びにために外出をした。そこで事件にあったまず貯金を下ろすために銀行に行ったところで強盗に遭遇し携帯を隠し持って通報しようとしたらバレて撃たれたんだった。気の短い犯人だな。


 そして、気がついたら声が聞こえてそのまま異世界来たんだな。




 そんなあまりにも長い、走馬燈を見終えたところで意識が戻った。


 溺れていたはずなのに肩に担いだ彼女たちを離していなかった。だがそれよりも、オークに殴られた横腹からとてつもない痛みがある。骨が折れているかもしれない。


 しばらく激流に流されていると流れが弱くなってきたので何とかして陸に上がった。彼女たちの様子を見ると息はあるようで安心した。安堵して緊張の糸が解けたのか俺はその場に倒れた。




 気が付くと、辺りは暗くなり始めていた。今日中には今日中に人の居る場所には行けそうににもないので、薪や食べれそうな木の実でも探そうと立ち上がると痛みのあまり転んでしまった。服をめくり状態を見ると赤黒く腫れあがり日本に住んでいる学生などでは到底見るようなもではなく自分のものなのに気分が悪くなった。


 しかしなぜか本気で我慢すれば耐えることができ行動できそうなので落ちてる枝と木の実を集めさっきの場所にまで戻った。


 そこで重大なことに気づいた。薪を集めても火がないし。さっきの攻撃で内臓もやられたのか水すら飲むのは難しかった。我慢してやったのにすべて意味がなかったようだ。


 しばらくして完全に夜になると、意識を失っていた2人がほぼ同時に目を覚ました。


「嫌、助けて。きっと次は私なんだ、嫌……」


「ここは、アイシャを探して森に入ってそのこでオークに会って、それで……」


 ここは真っ暗でほとんど何も見えず、2人の様子はわからないがそれぞれ諦めや恐怖といった感情を隠すことなく出していた。まだ状況に気づいていないのだろうか?


「やっと目を覚ましましたか。2人はこれに火をつけることはできますか?」


 薪を指さし。なるべく警戒心を抱かれないようにやさしく聞こえるよう話しかけた。すると2人は時間はかかったが段々と今の状況を理解してきたようだ。


「あ、はい。つけられます」


 そう言うと、突如薪に火がついた。


「うおっ!……痛ってぇ」


 冗談で言ったことを実行されて驚き後ろにひくっり返りその衝撃でわき腹が痛んだ。


 二人は俺の反応が面白かったのか、クスクス笑い始めた。悪意のない笑いを向けられるのは久しぶりで少しうれしくなる。


「もしよければ、そこにある木の実でも食べてください。食べられるものかわかりませんが」


 そう言い、川で洗った大きな葉っぱの上に置かれた黄色いブドウのような木の実を指さした。


「これは、レモブの実ではないですか!こんな高級なものをいいんですか」


 と目を輝かせながら訪ねてきた。


「僕は食べたからもういらないので、いいですよ」


 そう言うと彼女たちはその木の実を食べ始めた。


 二人が食べ終えたところで、会話を再開した。


「えーっと僕は佐野 進といいます。名前を聞いてもいいですか?」


 そうすると、肩甲骨のあたりまで少しウェーブのかかった黒髪を伸ばした赤目の女性が先に名乗ってきた。彼女はオークに担がれていた子だった。


「挨拶もせずにすいません、この度は助けていただきありがとうございます。私はクレア・グレイスといいます。こっちは妹のアイシャです」


 クレアにつられてアイシャも礼をする。


 アイシャは、明るい緑に髪を肩にかかるくらいまで伸ばした、緑色の目をした女性だった。


 そして二人とも顔立ちがとてもよく整っていた。


「いえいえ、そんなかしこまらないでください。たまたま助けられただけですから、気にしないでください」


 クレアは少し言いにくそうに


「すいません、私たちはシンさんにお礼としてお渡しできるものが今はないのですが何がお望みでしょうか?できる限り要望にこたえたいと思うのですが」


「それならちょうどよかった、じゃあ人の居るところにまで案内してもらっていいですか?あとできればこの世界の知識を教えていただけるといいのですが」


 彼女たちは驚いていた。まあ、命を救われてこれだけだったら俺でも驚く。でも今俺に一番必要なものはこれだし、大きく望みすぎて逃げられてしまった意味がないので慎重に越したことはないだろう。


「いいんですか?そんなことで。いくら何でも謙虚すぎなんじゃ」


 アイシャがおすおずと尋ねてきた。


 隠すことでもないので自分が知識のない理由をぼかしながら、大体正直に話した。


「なるほど、そういうことでしたら生活が安定するまで私たちの家で暮らしませんか?もう一人下にアレスという妹がいてその三人で暮らしています。あまり裕福ではないのですがいかかでしょう」


 クレアが驚きの提案をしてきた。この人はないを言っているのだろう。俺からしたらありがたい提案でしかないが、彼女たちからしたら見ず知らずの男を家に泊めることになのに


「俺を家に泊めるなんて自分たちが襲われる心配とかはしないのか?そんなに顔立ちが整っている姉妹ならだれでも襲うぞ!?」


 突然の提案に驚いてつい素が出てしまった。


「それなら大丈夫です、シンさんは私が見た感じだと私たちに危害を加えないように見えましたから」


「そういうことなんで心配はしていません、普通の話し方でいいですよ」


 アイシャが根拠のないこと言い、クレアがそれを信じているようだ。俺がそんなにヘタレに見えるのだろうか。俺なら他人なんて絶対に信用できない。裏がありそうだから警戒はしておこう。


「それなら、俺としてはありがたい申し出だから受けようと思う」


 それと、2人と普通の話し方でいいと伝えておいた。


 そのまま、二人と少し話た後、交代で見張りを立てながら夜を明かした。

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憧れた異世界は優しい世界ではありませんでした。 @Sea_Mia_RGi_U3

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