華燭金魚

作者 篠崎琴子

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★★★ Excellent!!!

終戦後の頽廃が巣食う近代日本。金魚信仰が根付く街で、出征した兄に代わり、金魚さまの婿を務める少女と、金魚さまに仕える少年。
美しく切ない、神代との、人と神との別れ。
けれど、読み終えたとき、ほのかな蝋燭の火のように、胸が淡く温められる……麗しい、幻想小説です。

★★★ Excellent!!!

金魚の、婿として生きてきた少女が、敗戦をきっかけに離縁し、ひとに嫁ぐことになる。
琴子さんの幾重にも織り重ねられるような文章によって、儚くてうつくしく、幻想的なものがたりでした。言葉で編まれたベールは花嫁への贈り物のようで。わたしはあの、花嫁行列の場面がとても好きでした。
一方通行のようだった想いが、伝わっていたのが、嬉しくて、泣きそうになってしまいました。

★★★ Excellent!!!

物語の舞台は終戦直後の日本のどこかにある町・乙浦。
この土地には金魚を姫君として祀る伝統があって、その伝統を守る祭司のような役割を担っていた緋瀬家の少女・緑が主人公です。
戦死した兄の代わりに当世の金魚と結婚した緑ですが、戦争が終わったことによって、金魚とは離婚し、実業家である七橋家の、つまり人間の男性と再婚することになります。
乙浦の町は一見するととても綺麗で、戦争なんかどこか遠い世界のことであったかのようで、金魚のひらひらとした美しさやびいどろの金魚鉢の涼しさなどもあいまって幻想的な異世界のようにも思われますが、それは緑が守られていたから。今まで目隠しをされたように暮らしていた緑は、この町もまた戦争の影響を受けていたこと、世界はもう今までどおりではいられないことを悟ります。
その過程の、なんと残酷で、でも美しくて甘くて優しいこと!
完成された世界はとても綺麗で、同時に緑はただ綺麗なだけではなく、これから先は人間の奥方として強く生きていくであろうことを感じさせるラストシーンでありました。

それにしても、金魚の世話係である朝彦の魅力的なことと言ったら言葉では言い尽くせません。
そんなの好きになっちゃうに決まってる……と思いながら彼の動きを見ていました。
彼も幸せになりますように。
いやきっと放っておいても彼はずっと幸せなんだわ……今も昔もこれからも。