第11話

花弁のように輝く紅い星雲

無数に煌めく星々


…赤い


赤いチューリップが咲きました。

すっかり春です。

秋に植えたチューリップ。

あの大雪の時は完全に雪で埋もれて

もう駄目だと思っていたけれど

逞しいものです。


浩(ヒロ)が庭掃除をするなか

お母さんがチューリップに水をあげます。

あれから退院し大分体調も良くなりました。

浩も一安心です。


入院していた時。

お母さんが夢を見たのと浩に言いました。


…蒼い空をどんどん昇っている夢です。

そこにはサトがいて。抱きしめると

チーとクロも寄ってくるのです。


お母さんはああ私もここに来たのね、

また会えたわねと思ったのだけれど


サトもチーもクロもまた来るねと

去っていくのです。


この夢、わたしチーやクロが

亡くなった時にも観たわ、

何で忘れてたのかしらねと

お母さんは言うのです


そう話すお母さんの側に

光が瞬いた気がしました


それは。自分にも。


庭掃除を終えてふと顔をあげると

居間のガラス越しに浩自身の姿が

映っています


きらきら。きらきらと。

自分の周りにも光が見えます。

浩の側で、宝石の様にきらきらと

光り輝いているのです


そんな気が、浩にもしました。

爽やかな、風が吹いて。

チューリップのお花が微かに揺れます。

あまりに心地よい風で。

気がつくと微笑んでいました





お空の上なんだけど。

みんなが憶えててくれるから

実はけっこう


けっこうお側にいるんだよ




《おわり》

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

きらきらこころ 英邑美月 @hk0118-zoiya

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ