第10話
サトが兄弟たちと一緒にパパママと別れたのはまだほんの二ヶ月くらいのころ。
パパはサトそっくりのハチワレ猫で、ママはくりくり可愛らしい三毛猫です。
ほとんど覚えてはいないけど、でもサトの身体が、いえ心が。心いっぱいで覚えています。
「じゃあねサトまた後で」
「!」
ざざあと、白猫と白猫のパパママが消えていきます。
周りの真っ白な風景もまるで白いカーテンを剥ぐように…
ある一軒家のお庭に変わって。
お庭の様々な木々がさわさわ囁いて。
このお庭。知ってる。
たぶんサトが、ママパパと暮らしたお庭。
ああ、心が覚えてる風景だ。
心が覚えてるパパとママだ。
サトはわっ!とママとパパのもとに
駆け寄って、んぐんぐと頭を擦りよせます。
ママがぺろぺろと、サトの身体を舐めてくれました。
…会いたかった、会いたかったんだ
気がつけば、白い雲の上に
サト達はいました。
果てしなく周り一面、無限の雲でした。
空は吸い込まれそうに青く。
高いところで太陽が自分たちを照らします。
角度によってその光はぴかぴかと、
七色に瞬きサト達を照らします。
ママ、パパに導かれるように
サトも雲の上を歩き始めました。
…お前は兄弟たちを覚えてる?
…ううん、でも会ったら思い出す。
パパとママを思い出したみたいに。
…心が覚えてるから会えるわよ。
今度一緒に会いに行く?
…会えるの?でも皆、まだ『いれもの』が
あるんでしょ?ここに来てるんじゃ
ないんでしょ?
…おやサトはいつも会いにいってたの
気づかなかったかい?
サトはきょとんとします。
…ずっといたわよ、側に私たち。
サトには見えなかったと思うけど、
一緒だったのよ
…ねえ
ああ。サトは幸せでした。
こんなに沢山のものに愛されている
パパ、ママ大好き
兄弟たち大好き
あの子が大好き
目の前に、白猫がまた現れます。
「また会えたね」またお鼻にちゅっ。
ヒロ…ヒロ大好き
お父さん大好き。お母さん大好き。
この気持ち忘れない。
目の前に、
チーとクロがいました。
チーの周りにもクロの周りにも、
兄弟や家族と思われる猫達がいました。
「サト、無事来れたねよかった」
チーが声をかけてきます
「泣いちゃってるんじゃないかと思ったよ」
クロが相変わらず茶化すので、
なにおうー!とサトはクロに飛びつきます。
へへっ。
チーも大好き、クロも大好き。
周りに、無数の動物たちがいます。
猫だけじゃなくて、犬や
ウサギさんもいます。
とっても和やかで、皆わいわい賑やかで
やがて、皆少しずつ天に昇っていきます。
蒼い空、太陽の光を浴びて
星々のようです。無数の星々。
それはまるで、天の河のようです。
『いくよサト』
この声は誰。
皆、星の光となって。
皆混ざり合って。眩しくて、
よく見えなくなってきたけど確か
この声はチーかな?
サト、いれものを無くした僕らは
ひとつになって。
高く高く昇って。
巨きく膨らんで、縮んで、呼吸する。
この世界に、溶け込んでいく。
でもね、サト
サトが、クロが、僕が
あの人たちの心に在る限り
あの人たちがいる限り
溶け込んだ僕らはその瞬きだけ
その姿に還る
だからまた会えるよ
星々は蒼空の果て、太陽の遥か彼方を超えて
漆黒の 宙。
満天の星々の。
花弁のような星雲の。
巨きな巨きな光りのなかに。
静かに溶け込んでいきました
《続きます》
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます