第38話 あとがき

ごきげんよう、崔浩である。

ここまでお付き合い下さり、感謝する。


では、ここまでお読み下さった方に向け、

エールを送らせていただこう。


「鵜呑みにすんなよ?」


まぁ、鵜呑みにして下さっても

べつだん構わぬのだがな。

ただ、物事には手順がある。


それは、まず諸氏に取りての

  「カッコいい/悪いリーダー像」

こそが重要である、ということ。


当講座の諸項目は、一種の物差しとして

諸氏が描くリーダーキャラの

メンタル的、行動的プロポーション調整に

用いるべきである。つまり、


「うちのリーダーキャラ、この局面じゃ

 どう判断し、どう動くんだろう?」


と、テンプレにはめこみ、

考えてみるのである。


そしてこの時優先すべきは、

諸氏の理想像である。

テンプレと想定行動が

パッティングするのであれば、

躊躇なく諸氏の理想を取るのが良い。


良きリーダーとは勝つリーダー。

悪きリーダーとは負けるリーダー。


だが、冠に「カッコ」と付く場合、

そこに必要なのは、

諸氏の美学の投影である。


軍形編2に載るが如き

バトルプラン策定と同じである。

「変更しようのないところ」から、

計算をおろして行くのである。


それでリーダーキャラが

「暗君」要素ばかりになるのであれば、

そこを補えるサポートキャラを

配するのもおいしかろう。

さすれば意識的、構造的な

「最高のでこぼこコンビ」を

設定するが叶う。


と言うより、優れたリーダーの

実際的な指揮観は、アメリカの鉄鋼王

アンドリュー・カーネギーの墓に刻まれた、

かの言葉に集約されよう。即ち、


Here lies a man who knew how to enlist

in his service better men than himself

『此に横たわるは、彼の職掌にて

 己より技能に優れたる者を

 配すすべを知悉したるものなり』


である。自らに足りぬところを、

仲間や部下に補ってもらえて、

初めてリーダーは活躍できる、のである。


……と、余談が些か長くなったな。



さて、以上のようにリーダーの振る舞いを

補強した上で、いざ物語、である。


ここについては、実際に検討をしてみると、

割とテンプレ一つのみで

一エピソードが組立ってしまうのを

実感していただけるものと思う。


ここに、各テンプレを小さく織り込む。

テンプレの数は有限であるが、

その組立のバランスを調整することにより、

いくらでもエピソードを

生成することが叶おう。


この辺りについては、孫子原文中で

「これ関係ねーじゃん!」と省いた箇所が

思いがけず見事に語ってくれていた。


該当テキストは、

作品のオリジナリティや、

キャラクターのオリジナリティ。

こう言った部分に悩む諸氏にとりても、

勇気を与えてくれる箴言となろう。


故に当講座は、兵勢編前半に載る

その言葉をアレンジの上提示することで、

〆の挨拶とさせて頂くこととする。



聲不過五、五聲之變、不可勝聽也。

色不過五、五色之變、不可勝觀也。

味不過五、五味之變、不可勝嘗也。

物語、不過テンプレ、

テンプレ之變、不可作窮也。

テンプレ相生、如循環之無端、孰能窮之。


 発声の型はわずか五種に収斂する。

 しかしその組合せは無数にある。

 故に発声は極まらぬ。


 色は突き詰めればわずか五色である。

 しかしその組合せは無数にある。

 故に全ての色を知ることは出来ぬ。


 味覚は突き詰めればわずか五種である。

 しかしその組合せは無数にある。

 故に全ての味を知ることは出来ぬ。


 物語もまたテンプレの集合体に過ぎぬが、

 しかしその組合せは無数にある。

 故に全ての物語を提示など出来ぬ。


 テンプレの絡み合う様は、

 幾ら円周を辿れど端に行き着かぬに似る。


 いったい誰が、

 その極みになど辿り着こうか。



尽きせぬ物語を、

厭くことなく求めて行きたいものであるな。



ではまた、いずこかにて。

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崔浩先生の「厨二のための孫子」講座 ヘツポツ斎 @s8ooo

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