第4話
「よっこらせ」
白咲の隣のベンチに座る。チラリと様子を伺えば、飲み物片手にスマホをいじっている。
人間界の時間が分かる懐中時計をポケットから取り出して確認する。
この人、平日の昼間なのに仕事してないのかな…なんて、少し不安になる。
モデルという職業柄、休みが不規則なのかもしれないけど。
さて、これで僕も休み同然になった。
あとは白咲が死ぬのを待つだけだ。
四六時中側にいることにはなるけど、別に困ることも無し、何をして過ごそうかな。
いつものことながら、この暇つぶしが困ってしまう。
死んだら生前の頃の記憶は無くなってしまうから、人間だった頃の僕がこういう時どうやって過ごしていたのか全然分からないし、想像もつかない。一体僕は何が好きで何が嫌いで、何を思っていたのか。
とりあえずいつものように対象の観察をしてみる。足を抱えて白咲の方を向いて座りなおした。
しばらく観察してみたものの、ずっとスマホを弄るだけ。若い人間はみんなこうでつまらない。
もっと何か面白いことやればいいのに。
でも、不思議だなぁ。この人間、もうすぐ死ぬんだもんな。
いつも通り生きて、そのまま死ぬんだ。
だからこうして側からみればつまんないこと平気で出来るんだろうけど。
僕は死神 ナズ森 @sana_0310
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