第3話
白咲檬架。性別、男。年齢、20歳。
職業、モデル兼俳優。
何度も見てきた文字列と、紙の右上にある顔写真をもう一度確認する。
人間界に降り立った時点で間違えることはないけれど、もし万が一同姓同名の別人をあの世に連れて行ってしまうとまずいことになる。
どんなまずいことか…株式会社デッドゾーン配属したての頃、新人教育係の死神さんには、人間界から青ざめた顔で帰ってきたあと、社長室に呼ばれたまま戻ってくることはなかった。
あのあと死神さんはどうなったのか。
先輩に聞けば、責任を取らされたのだと言う。
だがそれ以上は決して教えてはくれなかった。
いや、先輩も知らなかったのだろうと思う。
とにかくそんなことがあって、間違った魂を連れて行くことは、死神界のタブーの一つになっている。
うん、覚えた。まずはこの人間を探すところから始める。
とは言え降り立った時点ですぐ側にはいるはずなので、すぐ見つかるとは思うんだけど。
「あっ、いた」
クリーム色の髪に青みがかった瞳。
帽子と眼鏡で分かりづらいけれど、死神には人間の寿命が見えるから一目瞭然だ。
あと一週間もすれば寿命を迎える人間。
雑踏から少し離れた公園の日陰のベンチに、白咲檬架はいた。
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