人間革命

No.シックス

episode0 〜プロローグ〜




















時代が変わったとしても、相手が人間でないとしても、ながれる血が、本物でないとしても、あなたは...


















戦争を、望みますか。































………ポイント01(ゼロワン)において保守団から攻撃を受けています。ナンバー801〜902、1948〜2051の人工知能(クリエイティットハート)は直ちにに武装し、攻撃態勢を整えホールに集合してください。繰り返します。ナンバー…。要塞内が赤く染まり、警告音が一定のリズムを刻みながら響き渡っている。今日も始まる戦争の兆しに怯えながら、一歩一歩歩いていく。周りは慌ただしく、通路をかけ抜ける金属音で私は自分の立場を理解した。要塞というのに相応しいほどの内装は、ガラスと金属でできているため少し未来感がある。広大な大きさを誇る要塞ということもあって、中々ホールに辿りつかない。とはいえ、要塞などと言っているけどここが私達の家。ここで生まれた、いや、造られたと言う方が正しいか…。そうして、造られてからずっと戦ってきた。思いっきり遊んだこともなければ、友達や恋人なんかをつくったこともない。自由の意味すらもはっきりとは分からない。ただあるのは、そういうことがある、という情報のみ。どんな感じなんだろうと、時々考えることがある。戦うためだけに造られて、戦うためだけに壊れて(死んで)いく。…そんなのもうやだな…。けど、それが私、私達が存在し続ける理由でもある。へへへっ、もう分っかんない。…………どれくらいの時間が過ぎたのでしょうか。ゆっくり歩き過ぎたみたい。ナンバー2047リゼ、至急武装しホールに集合してください。リゼ。それが私の名前というやつだ。私を含めたLevel fiveにだけそのような名前が付いている。何故そのようなものがあるのか詳しいことは分からないが、人間に人間と近いものと戦争させることにより、さらなる恐怖を植え付けるためだと私は思っている。偽物とはいえ血ならぬ、赤い液体まで出るし。けど、Level fiveの詳しいことは何も分からない。これだって私の仮説に過ぎないから。とはいえ、あまりの遅さに放送がかかり少し急いだ。武装といっても鎧を着たり、特殊スーツを着たりするわけではなく、格好がよく少しオシャレな軍服に、高性能の銃と変え弾の入った袋を装着する程度のこと。…いつもの光景。沢山の人工知能(クリエイティットハート)がそこには既に整列していた。作り物のくせに顔は多種多様。体も事細かく再現されていて、Level fiveなんてもう人間じゃん、っていうほどのもの。言葉を話して会話もするし性格だって様々。200機ぐらいでしょうか。昨日の戦いでは多くの受傷者が出、生産が追いついていないため過去にない程機が少ない。定位置に集合した私達人工知能(クリエイティットハート)のもとに放送がかかった。『これよりポイント01(ゼロワン)において保守団との交戦を開始する。敵はおよそ100。憎き人間どもに裁きを!我ら人工知能(クリエイティドハート)に栄光を…!』毎回出動するときに流れる洗脳じみたその放送とともに地面が揺れるほどの喝采が起こった。放送者は一体誰なのだろう。風が吹き、地面の砂が巻き上がるように舞っているポイント01(ゼロワン)では既に防衛兵が戦っており、見るからにほぼ互角の戦いである。私達が加わったら確実にこちらが有利になるのは間違い。そう戦況を眺めていると、私達人工知能(クリエイティットハート)200機のうちの1機が保守団の武装人に撃たれ、その機能を停止した。こちらが有利になるというのは間違っていたかもしれない。それと同時に私も含めた残りの人工知能(クリエイティットハート)199機が交戦に加わった。頭は優れているが身体能力は人間と大差がないため、遠くから見るとまるで人間同士が戦っているように見えるのも嘘ではない。大砲や手榴弾で保守団の武装人の首や手足や、人工知能(クリエイティットハート)の上半身が飛んだり、爆風で体が爛れたまま倒れている者がいたりしている。そして赤い液体(血)が飛び交う中、苦しむような叫び声と興奮に満ちた怒りの声があちらこちらから聞こえてくる。それらは保守団の武装人のものなのか、はたまた人工知能(クリエイティットハート)のものなのかは分からなかった。そんなことは気にせず、私はただ殺し続けた。殺さないでと嘆く人間も、武器を捨てて降参の合図を送る人間も。だけど私の心はそれを望んではいなかった。人間を一人殺すたびに苦しくなっていく。戦争は終わり、保守団は全滅。私達人工知能(クリエイティットハート)も私を除いてそこに立っている者はいなかった。要塞から約12キロ西に位置するポイント01(ゼロワン)。草などは一切生えてなく、地面に水が無いせいか、からっからに乾燥している。まさに荒野…。服には沢山の赤い液体(血)が染み込んで下に垂れている。その光景にゾッとし、震える手を見た後、もう少しで夜へとなりそうな夕暮れの空を見上げ、私は思う。保守革新戦争が始まって15年。私達人工知能(クリエイティットハート)もかなり減り、奪ってきた領地も大幅に奪還された。今までに何人殺しただろうか。何人絶望の底へ落としただろうか。そして何を求めて戦っているのだろうか。怖い。もうやめたい?思い出せない古い記憶。分からない。いや、わかりたくないのかもしれない。そんな私の頬を一筋の暖かなものが伝っていく……。





偽物ね…。
















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