第9話 自警団という名のホームレスたち

長老はその日、西橋の人間を集めて、話し合いをすることにした。

「みんな意見を言ってくれ」


「東橋の連中は最近調子に乗りすぎだ、みんなで行って、ぶっ飛ばしてやろうぜ」

「馬鹿、そんな暴力的なことでは解決にはならんだろう。なんとか話し合いの場は持てないか」

「話し合いなど生ぬるい! ボコボコにして、土下座させて、飯を奢らせようぜ」


「待て待て、そもそも東橋の方が人数も多いし、元々盗賊崩れの連中が多くいるから、喧嘩はこちらより強いと思うぞ」

「何言ってんだ、こっちにだってアルポネさんがいるだろ。喧嘩なら負けねえぞ」

「まともに喧嘩できそうなのが、アルポネさん一人しかいねえんだよ。他は老人と子供しかいねえだろうが」

「そうだ、あのブツブツいつも言ってる剣士はどうなんだ、一見冒険者風だし、強えんじゃねえのか」

「あ・・あの離れに住んでるやつね、そもそもどうしてそいつは今日来てねえんだ」

「誰も声かけてねえんじゃないか」


その、剣士とやらは、みんなと少し離れた場所に、俺と同じようなセンスのない家を建て、ひっそりと暮らして居る、剣士の格好をしたホームレスのことであった。特に周りと揉めることもないので、放置されているが、仲間という意識は薄いようで、このような会合にも呼ばれていなかった。


「おい、新入り、悪いけどちょっと呼んできてくれるか」

俺にそう声をかけたのは、前歯が全部抜けた、シゲさんという先輩ホームレスだった。

「あっ、わかったよ」


そう言って、その剣士の家に向かう。少し心配だったのか、リューイも一緒についてきた。


その剣士の家の前に来ると、中から気味の悪い声が聞こえてきた。

「はははっ・・俺は何もできないぞ・・そんな化け物相手に、戦うって選択肢ないだろ、逃げてよかったんだ。残って戦っても死体が一つ増えただけだよ・・俺は悪くない・・・俺は悪くない・・・」


少し躊躇したけど、俺は思っ切って、その家のドアを叩いた。

「こんばんわー、ちょっといいかな」

少しの沈黙の後に、家の中から、剣士風の男が現れた。

「何だ? 俺は悪くないぞ。悪いのはあいつらなんだ、あいつらがあんなクエスト受けなければこんなことにはならなかったんだ」


「はいはい。あなたは悪くないよ。なのでちょとこっちに来てくれるか? みんなで話し合いしてるから参加してくれ」


「そうだよな、悪くないよな、よかった・・理解してくれて・・」

「うん、うん。それじゃ、行こうか」

そう言って剣士をみんなの場所へと連れていく。どうも話は噛み合ってないけど、そんなことは俺の知ったことではない。


剣士をみんなの元へ連れて行くと、なぜかまた剣士が騒ぎ始めた。

「なんだ、こんなに人がいるんだ。もしかして俺を責めるのか、あれは俺のせいじゃないぞ。ああするしかなかったんだ。俺は悪くない。悪いのはあのクエストを引き受けたあいつだ!」


そんな彼の肩に手を回して、耳元で、俺はこう言った。

「そうだ、お前は悪くない。お前は悪くないんだ。だから、みんなの話をちゃんと聞くんだぞ」


「そうだよな、俺は悪くないよな・・」

そう言って剣士はおとなしくなった。


そんな俺たちに、何やら長老が話をしてきた。

「それでな、お前たちが不在の時に話がまとまったんだが、自分の身は自分で守ると話が決まった」


「なるほど、それはどういう意味ですか」

「自警団を作ることになったんじゃ」


「自警団?」

「そうだ、やつらの暴力に対抗する為に、若い者を中心で組織するのだ」

「なるほど、それはいい考えかもな」

「うむ。なので頼んだぞエイタ」

「・・・・はっ?」

「いや、うちの若い者といえば、お主とその剣士しかおらんからな・・二人に自警団をお願いしたい」


え・・と、まあ、百歩譲って自警団やるのはいいけど、この意味のわからない剣士が一緒ってのが少し不安である。それを懸念していると、自警団をやるのが不安なのかと思われたらしく、アルポネさんとリューイが声をかけてくれる。

「二人じゃ不安だろ。ワシも自警団に入ろう。良いかな長老」

「俺も入るよ自警団、エイタに任せてたら心配だから」


なんと優しいやつらなのだ。こうして、俺、妙な剣士、アルポネ、リューイで西橋自警団が結成された。役割は、西橋の連中を、東橋の奴らから守る事・・なんだかな・・と思いながらも、流れに任せている自分がそこにいた。






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ホームレスから始める異世界人生 RYOMA @RyomaRyoma

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