足元に縄が落ちている。

とぐろを巻いた麻縄。

綺麗にまとめた綿ロープ。

無粋な金属の枷。

これを用意したのはほかならぬ自分で、縛っていたのも戒めていたのも、ほかならぬ自分。


枷をしているからうまく生きられない。

それを盾にして、ようやく生きているだけの脆弱な自己。

これがあるからうまく笑えない。

こうしているからここから動けない。

そうやって逃げてきた。

自分で縛っておきながら、解けなくて絡まっていたのは自業自得。

わかってはいても、抜けられなかったのは弱かったから。


それごと愛せる他者なんているんだろうか。

私は、私を愛せないままで生きている。

これがあなたなら、傷ごと愛して見せるのに。

それくらいいとわないのに、自分のことになると許せないでいる。


私は私を縛るのを止めない。

足元の縄を手に取る。

どうすればいいかなんて、知っている。

どうしてそうなるのかも、知っている。

こうやって使うのはいけないのは知っている。

それでも、私はいつか私自身を食らうのだろう。


いつまでも抜け出せないここは極楽ではない。

いつまでも抜け出そうとしないのは賢明ではない。

異常なことなんて知っている。

それでも、私はここで朽ちていこうと願う。

これが、私の色と決意。

誰も、誰一人、助け出そうとなんてしないで頂戴。

高らかに、笑って見せるから。触れてなんてくれないで。

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あの頃の私と生きにくいあなたのための言葉の森 明里 好奇 @kouki1328akesato

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