マギア

雀蜂みつ

一話完結型短編小説

この世界は、魔法が民を支配していた。しかし、魔法は誰もができる能力ではなく、魔法を使える血族のみが、魔法を使えるのだ。だが年々魔法使いは減り続け、今や伝説と化していた。国王であるバゼルは、魔法使いになろうと部下をかき集め、血族でなくとも魔法を使えるようになる、ネジ巻きのような機械仕掛けの「マギア」を探すように命じた。


〜〜〜


「アリス、これから皆んなで婆さんの家に行くけど、一緒にどう?」

私の友達、ヒロが訪ねてきた。

「え、イズミ婆さんの家?そんな話聞いてないよ?私だけハブられてるのかな…」

私はアリス。ごく普通の女の子である。魔法は使えない。ただ、魔法を使える男の子は知ってる。たまにしか喋らないけど、でもまぁ、そう言う感じ。

「まあ、気にするなって。連絡がたまたま来てなかっただけだよ。行こうぜ。」

ヒロはそう言った。私とヒロは、婆さんの家に行くバスに乗り、移動した。

「あれ?イズミ婆さんの家すぎちゃったよ?」

「あぁ、今日はもう一つ奥の家に集合することになってるんだ。」

イズミ婆さんの敷地は広くて、家はいくつかあり、今日は奥の家に行くみたいだ。私が行くのは初めてかも。

そんなことを言いっていたら、イズミ婆さんの家に到着した。

「よく来たね!」

イズミ婆さんは嬉しそうに言った。私とヒロ以外にも、他に何人か訪ねていた。

「今日は、新しい科学技術を紹介しようと思ってね。VRとARのコラボによって、まるで魔法のように空間が操作できるんだよ!」

実演しながら簡単に説明していた。

これは凄い!

見たことがない技術に周りも驚いていた。

「この技術のプレゼンテーションは、お昼、大ホールで行うから、よかったら来てね。」

イズミ婆さんはそう言い、準備をしに奥の部屋へと入っていった。

私達もプレゼンを聞こうと大ホールへ向かった。

今日の参加者7人

そういう張り紙を見たが、周りの人数を数えてみると10人であった。何か違和感があったが、そもそも私は誘われてなかったのだから、少し多くても当たり前なのか。

みんなが席に着いた頃、イズミ婆さんは

「では、そろそろ説明会を始めていきたいと思います」

といった直後、男2人が

「すいません、僕たち帰りますね」

と言った。イズミ婆さんは

「あら、そう。でも帰りのバスが今ないからねぇ。車ならあるけど、誰か送ってあげる?」

と言うと、隣にいた大柄の男が

「おいアリス、お前送ってやれよ。そもそもお前、このイベントには誘われてないだろ?」

と怒鳴りながら言った。

「た、確かにそうですけど、私、この説明会に参加したいです…!」

何故か、この説明かに残らなければならないと、強く感じていた。

「なら、僕が行きます。」

ガヤガヤとしている中、そう名乗り出たのは魔法使いのマキ君であった。私は、マキ君がこの説明会に来ていたのはここで初めて知った。もちろんマキ君が魔法使いであることは誰も知らない…はず。

「マ、マキ君?危ないよ!1人で行動しちゃ!」

私は小声で言うと、マキ君は

「大丈夫だよ。何かあった時はこれを。」

そう言い何かをされたが、私には何も分からなかった。

「ちっ、もう済んだか?じゃあ説明かを再開するぞ。」

大柄の男は納得のいかないような口調で場を鎮めた。


〜〜〜


「まだか!?まだマギアは見つからないのか!?」

国王バゼルはそう言う。

「大変申し訳ありません。もう少々お待ちください。」

部下達は震えた声で謝罪した。

「こうなれば…仕方あるまい、危険だが、1度魔法使いに接した事があると聞いている我妻を生贄に、魔法使いの血を創り出すしかない!」

「そ、そんな事をしたら、バゼル様の妃様は二度と人の形として元に戻らないですぞ!」

「煩い!魔法を使えるようになれば、なんだってできるのだ!やれええええええ!」

「か、かしこまりました…」

バゼルと部下達のやりとりは瞬く間に、城中に広まった。

「い、いやです!いくらバゼル様の言う事でも、それはゆるすことができません!」

妃は、そう拒んだ。

「私の言うことがわからぬか?」

鋭い剣を首元までチラつかせバゼルは脅した。


〜〜〜


「どうやらマギアは煉獄山にあるみたい。」

私は、イズミ婆さんの説明会を受け、マギアの位置を知った。もちろん、それを知った他の説明会を受けていた人たちも、煉獄山に行くオーラを出していた。

「アリスも行くの?」

「ヒロ!?あなたも行くの?」

「当たり前だ。俺は、あの子を取り戻したい。それには魔法の力が不可欠なんだ。」

ヒロは真剣な表情で私に語った。

「そうだよね、みんな欲しいよね。」

「アリスは何故マギアがそんなに欲しいんだ?」

「わ、私は…」

私はマキ君と同等に会話したい。ただそれだけ。ヒロと比べたらちっぽけだけど…。そんな理由、認めてくれないよね。

「きっと、山頂では争いが起こるだろうな。皆、一つしかないマギアを求めて、死ぬ。生き残るのは1人だけだと思う。」

「そ、そんなの…よくないよ。…きっと、沢山あって、皆んなで分けれるくらい、沢山あるよ…!」

「アリスは可愛いな。…そうだな!きっと沢山ある!」


〜〜〜


「良くやった!!!」

バゼルは歓声をあげた。

「こいつ、変な婆さんの家に居ましたぜ、ヘッヘッ」

部下はそう言いながらマキを国王に差し出した。

「君が魔法使いのマキか。つい先ほど、我妻を実験として見たのだがな。どうやらうまくいかなくて。君の力がぜひ欲しいのだが、どうかな?」

バゼルはニヤケながらマキに話しかけた。

「断る…」

マキはすぐに拒んだ。

「ほお、いまなら手荒な真似はしないで置こうと思っているのだが…、仕方がないな。」

「あなた達は…魔法で何をしようとしてるんだ?何のために魔法を手に入れようとしてるんだ?」

マキは少し怒鳴った口調で、バゼルに言った。

「煩い男だな君は。それに答える義務は、私には無い。そして残念だよ。君の善意な力を借りれなくて」


〜〜〜


時間が経った


もう山頂も見え、数十メートルの距離だった。何人かの参加者は道中で倒れた。

そして。

「ここが、山頂…」

「何もないじゃない…」

目の前は噴火口で、何かが置いてある気配は全くなかった。

「一体どう言うことだ?俺たちは何のためにここまで来たんだ?」

「きっとどこかにあるはずよ!探すのよ!」

みんなは混乱し始めた。

混乱し、山頂の至る所に散らばり、あたりを探し始めた。

「ヒロ…?ホントにここにマギアがあるのかな…?」

「あ、あるに決まってるだろ!」

その時、地面が揺れた。

「な、なんだ…?」

噴火口からマグマが飛び散り、煉獄山が大きな爆発音とともに噴火したのだ。

ドオオオオオオオオオオオン!

その揺れと、マグマ、噴煙と共に、噴火口近くにいた参加者達は一瞬で姿を消した。

私とヒロは幸い、少し離れた位置にいたので、山を全速力で駆け下りた。

噴石などが飛び散り、恐怖を感じた。

周りは、私とヒロしかいなかった。

ひたすら、山を駆け下りた。

だが、ヒロは噴石に当たり、倒れてしまった。

「ヒロ!!」

私は叫んだが、噴石の勢いに負け、生存の本能が、逃げろと囁いた。

私は泣きながら山を駆け下りた。

途中、天然にできた落とし穴にはまり、足をくじいてしまった。しかしその穴のおかげで、噴石流から逃れることができた。

もう戻ることもできない。穴の深さはそれ程深くはないが、足をくじいてしまって、さらに体力もそれほど残っていない。絶望的だった。


私達は一体何をしたかったのだろう?


力を求めて、魔法を求めて。

何かを助けるため?

人の為?

きっと違う、私達人間は、結局自分の為に生きてる。だれが犠牲になろうと、自分こそが正義なんだ。私はきっとその穢れた心を持った人間の1人…。

全てを諦めかけていた。


その時だった。


近くに、ネジ巻きのようなものがあった。

「これって…。あの時。」

イズミ婆さんの家から、マキ君が去る時、私に渡してくれたもの。「何かあった時にはこれを」言い渡してくれた。

「お願い、助けて…、マキ君…。みんな死んじゃったよ…。私、もう自我の為に誰かを犠牲にするのは嫌だよ…。みんなと仲良く、楽しく過ごしたかっただけなんだよ…。」

涙が溢れた。

震えた声で、ネジ巻きに言った。


すると


ネジ巻きが溶け始め、変態し、小さなマキ君が現れたのだ。

「アリス、助けてくれ」

「マキ君…!?」

「今の僕はきっとこの世界にはもういない」

「え!?交通事故でも起こしたの!?」

「違うよ。国王バゼルに、殺された。魔法使いの純血を求めて。だが僕は純血では無い。きっと失敗に終わるだろう。この争いを止めるには国王の首を飛ばすしかない。そして魔法使いは、イズミ婆さんを除いてもういない。」

「え…?」

「そこで、アリス、君に僕の全ての力を預ける。」

「そんな、いきなり…!」

「アリス、きみも魔法が欲しかったんだろう?そしてこのマギアが今解き放たれた。魔法使いは意味もなく誰かを殺したりはしない。自我の為に使わない人のためにあ使うものなんだ。」

「マギア…?でもそんなもの、山頂に無かったよ…」

「マギアとは、魔法使いが作り出した、エネルギーの塊。人から人に渡す手紙みたいなものだよ。山頂に、そんなものがあるはずない。」

「でも、イズミ婆さんは…」

「アリス、君はそもそも誘われていないだろう?イズミ婆さんはきっと試したんだよ。人の欲望、魔法使いの真意をね。」

「…」

「マギアが解き放たれた、アリス、君の純粋な心で。お願いだ。僕の力を預かってくれないか?このままだと、国王はまた血を求めて、街を荒らしてしまう。止めるなら今しかないんだ!」

私は少し悩んだ。

でも悩めるほどの時間は無かった。

そして答えは出た。

「わ、わかった…私、頑張る。」

「ありがとう、アリス。」

そして小さなマキ君は青白い霧と共に消えた。

「ま、待って!こんなに喋れたの初めてだよね。」

すると青白いオーラはアリスを取り巻き始めた

「もうちょっと、お話しようよ…!」

青白いオーラは掠れ消えていった。

「マキ君…」


その時、私は全てを悟った。


国王の妃が今日、殺されたこと

マキ君の首が飛んだこと

街で起こっている詐欺

悲惨な強姦

強盗や嘘、裏切りや憎しみ

人間の欲望がいかに汚らわしく、残酷か。

気持ち悪い

吐きそうになる

悲しみと恐怖が同時に私の心を襲った


〜〜〜〜〜


「なぜだ!なぜ成功しないのだ!!」

バゼルは言う

「お、落ち着いてください国王様!そもそも魔法使いなんて伝説で、ホントは存在しないのかもしれないんでは…」

「たしかに、魔法使いだと思っていたマキとやらも、結局は魔法を使っていなかったからな…」

部下達は疲れ果てていた。

「何?私に逆らうのか?貴様ら、そんな事をしたらどうなるか…」

その時だった、国王の隣の壁が光り始め、爆発し、バゼルの首が一瞬で飛んでいった。

「ひ、ひええええええ!」

部下達は叫び、逃げていった。


〜〜〜


間も無くして、新しい国王が誕生した。

女性や子供、福祉に力を入れる国王だった。

私は、アリス

見た目はごく普通の女の子

でも、ちょっとした魔法なら使える。

こんな風にね

どら焼きを作っていた職人のコンロの火が消えた。

その後強い風が吹き、職人は風の影響で火が消えたと思った。

私はニコニコしながら街を歩いている


後ろから足音が聞こえた。


私は振り返った。


そこには、背の高さ、格好、顔とも誰かに似ている男の子が、そこに立っていた。


そう、それはきっと…


〜おわり〜

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マギア 雀蜂みつ @kotobachi_mitsu

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