とある勇者のいたたまれない冒険

穂高美青

皆大好きカノーさん

よくある流れで、この世を去ってしまったカノーさん。彼は美人な奥さんと、可愛い一人娘を持った、この現実世界のどこにでもいるような、ごく普通のサラリーマンでした。


彼は天国で、ミドリ色の優し気な神様に会いました。

神様は家族を思ってシクシク悲しむカノーさんを不憫に思い、異世界へ転生させることを決めました。

勿論、チート能力もあります。

その世界で唯一無二の、魔王に対抗することの出来る能力を授けてくれました。


ミドリ色の神様はとても優しいお方だったのです。



ところが、異世界へ飛ばされる直前でアオ色の神様がやってきて「それではつまらないから、こうしよう」と言いながら、ある魔法をかけていきました。


それは、『誰からも好かれない魔法』


賢者とか、隠者とか、そういう人が自分自身にかけて人を避ける、不思議な不思議な、呪文でした。


魔法というより、もはや呪いでした。



しかしその事実に気付くことなく、異世界へ転生させられたカノーさん。

転生先は、自分の記憶はあるし、もう大人だし、役職も世界を救うべく異世界から召喚された勇者として、お給料などの待遇面は至れり尽くせりです。


ところが、最初に話した女王様も、大臣も、貴族も、兵士も、なんだかカノーさんに優しくありません。


女王様は、初めて姿を現した時には

「よくぞ参った、勇者殿よ……」

と仰っていたのに、カノーさんと目を合わせた次の瞬間には

「なんじゃ、この男は。これが勇者か? はん、面白くも無い」と言ってそのお美しい顔を見せてくれなくなりました。


大臣や貴族達も、目を合わせた途端にげんなりとした顔をされ、兵士に至っては切りかかって来る者まで出る始末でした。


お給料はもらえても、これではおちおち城にいられません。

カノーさんは城下町におりました。

ところが、街におりても、街人も、商人も、農民も、家畜ですらカノーさんに優しくありません。

皆カノーさんを騙そうとしたり、意地悪したり、お城よりも酷い扱いです。

お金はあるのに宿にすら泊まれません。


何とか情報を得ようと、人々に魔王について聞いても、「魔王よりも貴方が嫌い」と言われる始末です。


この世界の魔王は、それはそれは恐ろしい、世界最強の魔法を使う、極悪非道な魔物でした。


この世界の半分はこの魔王によって支配されてしまっていたのでした。


それでも人々は言います。


「魔王よりも貴方が嫌い。やめてよしてさわらないで垢が付くから」


女王様にはいいように使われ、助けたはずの村人には罵られ、カノーさんはもう心が折れそうでした。


魔王を倒せるのはこの世でただ一人、チート能力を持ったカノーさんだけ。

どうしてこんなことになったのでしょう、「前世に帰りたい……」と転生前の事をよくよく考えてみれば、そうだ。あの異世界に飛び立つ瞬間、あのアオ色神様がなんかしたからに違いない。と、何とか思い出すことが出来たのでした。


神様のかけた魔法を解く方法は無いものか?

カノーさんは一人、孤独の中で賢者を探す旅に出たのでした……。


to be continued……?

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