第7節 体育祭の朝

 さて、体育祭当日だ。

 今日は、母が「がんばってね!」と、唐揚げを沢山入れた弁当を持たせてくれた。母が作ってくれるものは何でも美味しいが、唐揚げは特に私の大好物だ。今から昼食が楽しみでしかたがない。

 家を出て歩いているとどうやら待っていたらしい剣持勇也が(なぜか、偶然通りかかった風を毎回装ってくるのだが、バレていることには気づいてないようだ)声をかけてきて、それから他愛もない話(主には昨日お土産に買ったケーキを食べた両親の感想を伝えている)をしていると。今度は本当に偶然友人のツカサに出くわした。

「あ、おっはよ~まこちん♪ ま、今日は気楽にがんばろうね★」

「ええ、そうね。」

 とは返したものの、うっかり気を抜いて人間以上の力が出ないように注意するのは言うまでもない。

「って剣持もいるじゃん。オッスオッス。」

「お、オッスオッス。」

 剣持は控えめに挨拶を返す。剣持はちょっとツカサのことが苦手らしい。まぁ私にはどうでも良いことだが。

 いつも通りに教室に着いて、他のクラスメイトたちと適当に会話する。

「あれ? そういえば茨城さんは?」

 いつも私が登校する時間には教室で本を読んでいる茨城美姫がいない。隣の席の周防にたずねる。ちなみにコイツは部活もやってないのに7時45分には登校しているらしい。真面目になる、というのを履き違えているようだ。

「そういや見てないですね……い、いや、見てねえ、な……。」

 周防には、普通のクラスメイトとして私と接しろと命じたのだが、どうにも敬語が抜けないらしい。言い直した言葉が尻すぼみになっていく。

 ……ブウウゥン、ブウウゥン、と、耳障りな音が聞こえてきた。なんだ?

「……ん? なんか騒がしくない?」

 剣持も気付いたらしく、窓の外を見てポツリと呟く

 つられて窓の外を見てみると、髪色が様々な、バイクの一団が学園に向かって来ていた……。


 

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亜久津さんは異世界召喚を阻止したい 藤ともみ @fuji_T0m0m1

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