ハイスペックな幼馴染みと異世界へ飛ぶ方法

KACLA −カクラ−

135から始まる生活習慣・・・



「ねえ、ユキトー! 面白いもの見つけたの!!」



 無邪気な子供のように、パタパタと足音を立てて彼女がまた事件を連れてくる。



「またか。警察に追われる系統のことはやめてくれよ?」



 というのも、以前彼女はおクスリをどこからか持ってきて、警察に追われかけたことがあったのだ。その時は間一髪で逃れたが・・・。次はないだろうな・・・。なかば呆れつつ、僕は走ってきた彼女を受け止める。



「見て! 下駄箱に入ってたの」



 嬉々とした様子で紙切れを、僕の眼下でひらつかせる。


 ん?



「異世界への飛び方?」


「そうなの! 凄いでしょ!!」


「それが下駄箱に?」



 彼女はとてもキラキラとした目つきで、コクコクと首を縦に振っている。


 ・・・コイツ、本当は賢いはずなんだけどなぁ・・・。



「さすがIQ135越えの一華はいうことが違うなぁ」


「褒めてないよね、それ。ユキトはこの紙信じてないの?」



 彼女のキラキラとした目が、瞬間、光を失っていく。


 いつものことである。



「嘘に決まってるだろ」


「この世界に絶対的な決まりはないよ」



 そうだ。決まりを嫌う。彼女は幼いころからこうだった。


『言葉だけでは分かるはずがない』って言われて


『言葉で表現できないものはないの』


 なんて言って、いきなり生きる意義を語ろうとしたり。


 いわゆる変人という奴だ。


 気が付くと、一華がこちらをのぞき込んでいた。



「どうしたの? 今、私のこと考えてたでしょ」



 な、なぜそれを? 



「あ。図星だね? やったー!! だって、私のほうを見ながらしきりに考えているんだもん。分からないはずがないよ」


「・・・。で、その異世界へはどうやって飛ぶんだ?」



 慌てて、話を逸らすが、彼女にとっては不自然なことではない。普通の会話。



「んー。まだ解読できてない。まってて」



 そうして、ルーズリーフとシャープペンを取り出す。


 見ると、『異世界への飛び方』と題された紙に、よく分からない文字が羅列されている。象形文字の類だろうが・・・。


 こんなの常人なら、時間の無駄だと解読は諦めるはずだが・・・。


 一華は違う。分からないを好み、探求する。



「あ、解けたよ!インダス文字みたいだね」



 はやっ!? ってか、インダス文字って解読されてなくない?



「ぜひ、その力をインダス文字解読で悩んでいる研究者とかに使ってやれ」


「ユキト、日本語変だよ?」


「うるさいな。驚いてるんだよ」



 こちらを見て不思議そうな顔をする。ヒントもなく意味の分からない文字を一瞬で読んでしまうなんてさすがにチートすぎるだろ!?



「ちなみに、解き方は企業秘密」


「いやいや、それ人類の発展の為にぜひ、研究者様にお伝えしてよ」


「ダメ! 目立ちたくはないもの」



 目立ちたくない割には、黒髪ロング、目、鼻をはじめとした顔のパーツが整っている完璧な美少女。そして、毎度目を引くファッショナリーな服装。ああ、忘れてた、おまけに突飛な発想力。


 これで、目立たないはずがないだろうに・・・。



「さすがIQ135だな」


「えへへ。でもそれ、適当だけどね」


「え?」


「面倒だったから、半分くらいしかやってないの」


「は?」


「あ、そうだ。今から異世界行かない?」


「はい?」



 次元の違う会話に全くついていけない。高校生の会話じゃない。これは一周回って小学生の会話だ。


 インダス文字を解読した次は異世界か!?


 また、一華がこちらをのぞき込んでくる。ヤツが幼馴染じゃなかったら、照れてしまっていただろう。



「3年くらい暇?」



 無邪気な顔で、なんのためらいもなく聞いてくる。本当もう、ぶっ飛んでる!!



「そんな先まで見通せるはずないだろ!」


「え? この先、森さん友達問題とかぶっカケ獣医師の問題とか責めるだけで国会は暇つぶしてるくらいだから安泰だよ」


「いや、それ。国家の存亡に関わる重大な問題だろ」


「そうかなぁ? 私ならどうでもいいんだけど・・・」



 いや、一華の尺で考えちゃダメだって。しかも、隠語みたいだけど分かりやすすぎるし・・・。



「これが、エヌ朝鮮だったらアウトだねっ!」


「お前、どうして俺の考えを!?」


「幼馴染の勘!! じゃ、ユキト暇そうだしさっそく行ってみよう!」



 え、まって。本当に異世界飛ばされたら困るから!


 必死に俺は首を横に振る。



「あれ? どうしたの?」


「いやー、アレだね・・・。コンビニの帰りに異世界行っちゃったり、トラクターにひかれかけた人を助けようとしてショック死したり、スマホ使ったりはしないんだね・・・」


「それは、私たちの先輩の話だね!」



 妙に楽しそうだ。今から物資そろえにコンビニ行こうとか言いだしそう・・・。



「ねえ、やっぱり今から異世界行かない?」


「モノとか揃えなくていいの!?」


「大丈夫。そこらへん保障するって書いてあるし」



 ここまで彼女の嬉々とした目は久しぶりに見た。どうせ失敗するだろうから試してやってもいいか。



「もし、失敗してもふさぎこむなよ?」


「うん! 大丈夫!! 宝くじだと思えばいいよね!」



 本当大丈夫かな。



「じゃあ、行くよ!」



 その瞬間、周囲が真っ白く染まり、気が付くと、僕たちは草原にいた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ハイスペックな幼馴染みと異世界へ飛ぶ方法 KACLA −カクラ− @kacla

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ