第13話 人、集いし剣

 そして、新学期、バンチニア高校は大きく変わっていた、今まで空き地だった西側の広大な土地には、仮囲いが施され、建設魔導機がひっきりなしに往来し、ロートスグループにより巨大な建築物が幾つも建造されていた。


 最初に完成したのは高さ三千メータの先端が円形ドームになっている巨大な搭で、此の巨大な搭は町の何処からでも見る事が出来る程、巨大であった。


 また、ハルチカ達、一年摩導科ツェ組の全員が進級して、二年生になったが、


 クラスの名前が、特務魔導科二年ツェ組になっていた。


 此の改称に学校から、何の説明も無かったので、クラスの生徒、全員が大騒ぎとなり、代表でクラスリーダのガルホール・スターゲスが聞きに行く事になり、彼が席を立った時、


 雛壇形式の教室の前方の廊下との出入り口の引き戸が引かれ、


 ピンクの髪にツインテール、顔に伊達メガネ、身長は150センチ位の幼顔の女性が入って来た。


 クラスの後方に座っていた、ハルチカ、コーリ、アンリ、ドリスは彼女を見ると驚いて、


「えっ!」


( ; ゜Д゜)


 彼女は、彼等を無視して自分の自己紹介を舌っ足らずの口調で始める。


「わたくちゅは、今日から貴方の担任になりまちゅ、魔導庁から派遣されまちゅた、チビリティ・ウルサリータでちゅ、宜しくでちゅ。」、と言ってペコリとお辞儀する。


 m( ̄∇ ̄)m


 クラスの全員も、魔導庁からの派遣と言う言葉にビックリして声を出す事も忘れ、


 チビウサ先生は、生徒達の驚きを完全に無視して、「それとでちゅね、此のクラスに転校生が二人いまちゅ、まじゅ、一人、入って来てくだちゃい。」、と彼女が言うと、


 再び出入り口の引き戸が引かれ、


 最初の一人は、銀髪のショートカット、端正な気品のある顔立ち、


 彼女を一目見るなり、


 クラス全員が更に驚愕して、


 前の方に座っていたクラスリーダのガルホール・スターゲスが椅子より立ち上がり、


「貴方は、第三公女殿下!」、とつい大声で叫んでしまい!


 公女はニコッと笑顔で、「皆様は、私の事を御存知のようですが、改めて自己紹介させて頂きます、私はリィデリィア・ウェルド、リィディとお呼びください。」、と言ってお辞儀する。


 o(*⌒―⌒*)o


 全員が、こんな田舎町に公女が転校して来た事に驚くが、


 殆ど公族に興味が無いハルチカは、ルーナさんと同じ名前に、ルーナさんの事を思いだして、


 ちょっと胸が痛むハルチカであった。


 チビウサは、「はいはいでちゅ、次の転校生、入って来るでちゅ。」、と彼女が言ったとたん、


 バーン!


 と勢い良く、引き戸が開き、紫が入った長い黒い髪に赤い瞳の少女が、


「ハル!来たぞ!」


(* ̄∇ ̄)ノ


 ハルチカが飛び上がって、「レイ!」、と叫び、


 レイは我慢出来ず、「先生!席、ハルの隣で良いから!」、と勝ってな事を言い、


 チビウサは呆れながら、「あいちゃつが先でちゅよ、レイちゃん!」


 レイは、頭を掻きながら、「おっと、あたしは、レイティシア・バリデュワ、宜しくな!」


 その名前を聞いた、秀才のエルダンス・ホーゲンスは、「えっ、バリデュワって、あの神学界で有名なバリデュワ家?」、と一人言を言い、


 レイは、「もう良いよな、先生!」


 チビウサはため息を付きながら、「好きにするでちゅ。」、と半端、自棄に成りながら許可を出し、


「有難うな、先生!」、と言って、レイはハルチカの元へ走って向かって、ハルチカに思いっきり抱き付いた後、コーリ、アンリ、ドリス達と楽しく会話を始める。


 クラスの全員が、呆気に取られてハルチカを見ていると、


 クラスナンバーワンのイケメン、ダンバード・グラスタが立ち上がって、「先生、では公女殿下の席は是非、私の横に、」、と進言し、


「ええええ、」、と隣で、恋人のエミリアが嫌な顔をし、


 チビウサは目でリィディに、どうすると聞き、


 公女は、「お申し出は有難うございます、ですが、私も、そのハルさんの側の空いてる席で結構です。」


「ええええええ!!!」


 クラス中の生徒が全員、驚いてハルチカを見る!


 一体、此のチンがデカイだけの、何の取り柄も無い男に何があった!


 と全員が驚いて、大騒ぎしていると、


 パンパンバン!


 とチビウサ先生が手を叩き、


「はい、はい、静にちいて、聞いてくだちゃい、皆ちゃんもう分かりまちたでちゅね、此のクラスは公女ちゃまが通うので、管轄が教魔庁から魔導庁に変わりまちゅ、でちゅから、クラス名は『特務魔導科二年ツェ組』になりまちゅ、そちて、護衛をかねて、補助として二名の副担任がつきまちゅ、はい、一人め!」、


 ガラッ、と引き戸が再び開かれ、「俺の扱い、雑じゃないかチビウサ。」、と言って入ってきたのは、


 赤茶の髪をポニーテールにして、身長は180センチと高く、引き締まったプロポーションの、


「よぅ、元気にしてたか、ハル!」


 ハルチカは、また驚いて、


「リナさん!」


 チビウサは面倒くさそうに、「魔導庁の職員で副担任のジュピーリーナ・グラシウスさんでちゅ。」


 紹介されたリナは、右手を上げて、「宜しくな!」とかっこ良く、


<(⌒_⌒)


 キャー、キャー、キャー


 クラス中の女性徒が、男装の麗人のようなリナに色めき立ち、


 パンパンバン!


 チビウサは再び手を打ち鳴らしながら、


「はい、はい、静にちて、其では、。」、と言った時、


 引き戸が開かれ、教室に入って来たその人は、


 ダァーン!


 彼女を見たハルチカは、


 その瞬間椅子より立ち上がり、


 その女性ひとは、


 光輝くオンブレ・プラチナの金髪ブロンドへアなびかせ、気高く、上品な顔立ちと、優しく涼しげなコールドブルーの瞳、


 美しく均整の取れたプロポーション、


 彼女はゆっくりと教室クラスルームに入り、


 入って来た彼女も、ハルチカをその優しき瞳で見続け、


 ハルチカは、


「ルーナ、・・・さん!!!」


 と絞り出すように、


 憧れて、何時しか気付かずに、恋し焦がれた、


 その人が、


 再び、自分の前に現れた瞬間、


 ワァアアアアアアア!!!


 と、クラス中が大歓声に包まれ!


 クラスリーダのガルホール・スターゲスが棒立ちした状態で、


「信じられない!救国の英雄!第二公女殿下迄!!」


 その喚声を聞いた、ハルチカの席の後ろに座ったリィディは誇らしげに、「相変わらず、御姉様の人気は凄いですね。」、とハルチカに聞こえるように、


 其を聞いた、ハルチカは始めて自分が恋した女性が何者であったかを知る!


「えっ!・・・ルーナさんて!!」


 パンパンバン!!


 再び、チビウサは手を打ち鳴らし、「はいはい!皆ちゃん、ちずかにちゅるでちゅよ!此の方が此のクラスのもう一人の副担任の、ルナリィア・ウェルドしゃまでちゅ!」


 ルーナはハルチカを見詰めながら、ハスキーな声で、「ルーナだ、諸君!此れから宜しく!」、と爽やかに挨拶し、


(〃⌒ー⌒〃)ゞ


 キャー!キャー!キャー!


 と、男子生徒も女子生徒も大騒ぎ!


 チビウサはもう諦めて、「最後に一言でちゅ、其処でヨダレ垂らして立ってる、ハルチン君、貴方は、色々、心当たりがあると思うから、放課後、『星魔搭せいまとう』に出頭ちなちゃい!以上でちゅ!!」


 その瞬間、


 クラスは静まり代える!


 シィーンンンンンン!


 やっと静になったクラスに安堵したチビウサ先生は、「では此でホームルームは終わりでちゅ、では、リナ、ルーナちゃま、退室ちまちょう。」、と言って、リナとルーナを促しながら、三人は教室クラスルームから退室した。


 残された、クラスメート全員が立ち尽くすハルチカを注視し、


「おぃ、ハルチン、魔導庁に出頭って言われたぞ!」


「あれ、あれの事だよ。」


「あれって!」


「魔人召喚!」


「えっ、あれ、じゃ、やっぱり犯人、ハルチンだったの!」


「バカ、声がデカイ、聞こえるよ!」


 と言う会話がクラス中に沸き起こり、


 たまりかねた、クラスリーダのガルホール・スターゲスが立ち上がって、「皆!聞いてくれ!確かに、コーデル君のした事は極悪非道!だが、虫にも一寸の情け!此のままでは、コーデル君は退学!更には刑務所!そして死刑、其では余りにも気の毒だ!皆で減刑の嘆願書を書こう!」、と勝手に演説を始め、


 自分よりモテるような状況が、ハルチカの回りで生まれよとしている事が気に入らない、イケメン、ダンバード・グラスタは、「ガル!僕は書かないからな、彼奴あいつは僕のエミリアを危険に晒したんだ!」


 そんなイケメン発言にエミリアはうっとりして、「ダン、素敵!」、と更にダンバードに惚れ込むエミリアだった。


 秀才のエルダンス・ホーゲンスは、


 どうでも良かった。


 何も知らないレイは、クラス全員がハルチカの悪口を言ってる事に、「一体何なんだ!此のクラスは!」、と今にも喧嘩しそうな勢いで腹を立て、


 其に対してリィディは、「でも、ハルチカさんは、呼び出される事に、心当たりが有るように見えますけど、」、と意味深な発言をし、


 確かに、ハルチカには心当たりがあった、


 ルーナさんが、公女!


 自分は大変な事をしてしまった!


 幾ら、ルーナさんを助ける為とは言え、自分は公女と、




 しちゃった!!!!!


 ルーナさんは、あの時、したら殺すと言っていた!


 つまり、


 僕は、




 ・・・・死刑確定!


 ハルチカは絶望のドン底に落ちたのであった。




 其は、ハルチカの人生にとって最も長い一日であった。


 ハルチカはコーリから、学校の西側に建設中の施設は全て魔導庁から発注された建造物で、取り分け高い搭がチビウサ先生が言った、『星魔搭せいまとう』である事を知らされた。


 日が傾き、時刻は夕方になろうとしている放課後、ハルチカはルーナさんに会うために、


星魔搭せいまとう』に行く事を決断した。


 あの時の事は間違っていたのかも知れない、でも、チンは言った、世界でルーナさんを救えるのは僕だけだと、そして、


 僕はルーナさんを救った、


 僕は分かる、僕はルーナさんを一目、見た時から、否、ハンカチを貸してくれた時、違う、あの美しくい草原を見た時、


 ちいがぁああああうう!!!


 隣にいるレイがビックリして、「どうした、ハル?」、と聞き、


 ハルチカは真っ赤な顔で、「だ、大丈夫、問題無い。」と答え、心の内は、


 兎に角、僕はルーナさんが好きだ、告白もした、チンに騙されてだけど、


 だから、あの事は後悔していない、


 愛するルーナさんを救えた、其だけで僕は満足している!


 だから、僕は全ての罰を受け入れる。


 其が、死刑であっても、


 ハルチカは、そう決意すると、


 夕暮れの空にゆっくりと昇って行く、美しき満月を背にしている、


星魔搭せいまとう』に向かった。




「でっ、何で、レイ、コーリがいるの?」


星魔搭せいまとう』に向かう両側に、コーリとレイが並んで歩いている。


 レイが怒りながら、「当たり前じゃん!ハルに酷い事したら、先生だって許さないんだから!」


 コーリも頷きながら、「そうですよ!ハルは私達で守ります!」


「コーリ、レイ」


 ハルチカは、二人の気持ちにちょっと感動したのだが、


 事が、公女としちゃった話しだし、


 事実を知ったら、二人とも絶対怒るよなぁ。


 と、複雑な心境のハルチカであった。


 そんな三人は、『星魔搭せいまとう』の魔導昇降に乗り、運命が待つ、最上階に向かった。


 チーン!


 魔導昇降機が最上階に到着した事を知らせるベルが鳴り、


 昇降機のドアが両側に開かれ、


 ハルチカ、コーリ、レイは、


星魔搭せいまとう』の最上階の圧倒的な景観に、


 一瞬、我を忘れる。


 其処は『星天宮せいてんきゅう』、数多あまたの星の光を取り込む為に全室が透明なガラス張りの空間で構成されていて、更に天井は満天の星々ほしぼしを写す巨大なガラスのドーム型、床は天空の星の光を反射させる、白の大理石、


 時は、夕刻、世界はオレンジに彩られていても、天空の星は、徐々にその数を、その明るさを増し続け、


 星は、圧巻する景色を『星天宮せいてんきゅう』に届けようとする。


 中央に巨大な大理石の円卓が有り、


 その円卓の前に、佇む人を見た、ハルチカは我に帰り、


 えっ、ルーナさん!


 ルーナはゆっくりとハルチカのほうに歩き出し、


 ハルチカは、逃げ出したくなる気持ちを必死に押さえながら、


 彼女を、ただ見続ける、


 彼女は、やっぱり綺麗で、


 美しく、


 ルーナが、ハルチカの目の前で立ち止まった時、


 ハルチカは、その瞳を閉じて、


 全てを受け入れる、


 覚悟をした、その時、


 語られた言葉は、




「よく、一人で、此処まで頑張ったな、ハル。」


 その声は、限りなく優しく、限りなくいとおしく、




 えっ!?


 その両手は、ゆっくりと優しく、ハルチカを抱き締める。


 ルーナはハルチカを抱き締めながら、囁く、


「ハル、貴方は決して一人じゃない、」


 一人じゃない、


 ハルチカは繰り返す、


 僕は、一人じゃない、


「貴方が、喪った大いなる人の変わりに、私が、」


 ルーナは、コーリとレイを見て、


 そして、再び、ハルチカを見ながら、


「私達が、私達、『星姫スタープリンセス』が支える!」


 今、ハルチカに喪われたケンの声が聞こえる、


『たとえ、俺が戻らなくても、今のお前には三人のなかまがいる、』


 ああ、コーリン、


 コーリン・オーウェル、


 今、貴方が言った言葉の意味が、


 僕は分かった!


 ハルチカの瞳から大粒の涙が溢れ、


 涙は、滝のように頬を伝い、


 床を濡らす。


 ハルチカは、ルーナを抱き締めながら、


 泣いていた。


 ルーナは、ハルチカの最初の出会いを、思いだし、「ハルは相変わらず、泣き虫だな。」、と笑顔で優しくハルチカに言い、


 ハルチカは、同じことをコーリンに言われた事を思いだし、


 また、涙が溢れるハルチカであった。



 何時しか、ハルチカの回りに人が集まり、


 グレーの魔導庁の制服を着た、ジュピーリーナ・グラシウスが、


「ハル、俺達もお前を支える為に此処に来た!」


 その隣に、チビリティ・ウルサリータが、


「ハルちゃま、全ての情報はハルちゃまの為に、」


 白に銀ラインの星巫女の正装をした、リィデリィア・ウェルドがハルチカの前で両手を広げながら、


「我が姉は、その姿を持って、全世界を説得した!」


 その瞬間、


 スパァアアアアアアンン!!


 天空の夜空に浮かび上がる、月光を背景に、


 ルナリィア・ウェルドは、


月姫プリンセス・ムーン』、となり、


 満天の夜空に一際巨大な、赤い大星を背にし、レイティシア・バリデュワが


「私達は、信じていた!我が剣の主マスターオブソード、貴方が再び此の地に戻って来る事を!」


 その瞬間、


 スパァアアアアアアンン!!


 レイティシア・バリデュワは、


火姫プリンセス・マーズ』、となり、


 万の輝く星の中で、一際輝く、黄金の極星を背にし、


 コーネリア・ロンディーヌが


「今、永き語られて来た伝説に、貴方と共に、私達が作る新たなる章が始まろうとしている!」


 その瞬間、


 スパァアアアアアアンン!!


 コーネリア・ロンディーヌは、


金姫プリンセス・ヴィーナス』、となった。


 そして、魔導投影機が、『星天宮せいてんきゅう』に、百人の人を投影する、


 ロートスグループの総帥、ベルスティ・ロンディーヌが、


 公主 ダブレスト・ウェルドが、


 ポワジューレ共和国議長、レーイバス・ドールテンが、


 その他、大勢の賢人達が、


 彼等こそが、百の世界の百の賢人達、


 その百人の賢人達の前で、


 星巫女、リィデリィア・ウェルドがハルチカに問う、


「コーリン・オーウェルが、貴方に最後に託された言葉は!」


 此の状況に圧倒されていた、ハルチカは、突如、振られた言葉に、


「えっ、コーリンが最後に言った言葉?・・・確か・・・残りの三人のなかまを探せ、・・・それと、」


 リィデリィア・ウェルドが促す、


「それと!」


 ハルチカが慌てて答える。


「それと・・・七人目のなかまを救えと、」、とハルチカがコーリンに言われた言葉をリィデリィア・ウェルドに伝えると、


 彼女は賢人達に向かって、


「今、此処に、我が『剣の主マスターオブソード』に新たなる命が託された!」


 そして、一息、置いて、


「其こそが、我らが『魔人大戦』に勝利する条件!」


月姫プリンセス・ムーン』、『火姫プリンセス・マーズ』、『金姫プリンセス・ヴィーナス』が膝不味き、


 三人が同時に、


『我が『剣の主マスターオブソード』と共に!』


 星巫女と百人の賢人達が膝不味き、


 ハルチカに向かって、


『我が『剣の主マスターオブソード』と共に!』


 と全員が言った瞬間!


 ハルチカは、


 世界の命運が自分に託された事を知り、


 そして、其こそが、第二のコーリン・オーウェルと言われた、


 ハルチカ・コーデルの、


 伝説の始まりであった。















 2018年7月17日、七星姫物語、第一章、伝説の始まり編


 完

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七星姫物語 Hs氏 @Hs_8823

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