猫人小伝妙『旅の終わり』

今村広樹

本編

ねこりゅう剣術の使い手であった官兵衛は、実の妹とその腹の中にいた子供を、妹と結婚した吉次郎に殺されてしまう。

佐賀藩士であった彼は、仇討ちのために、藩主に暇乞いをし、そのまま旅にでた。

そうして、吉次郎を探してさすらううちに、50年もたってしまい、ようやく仇を見つけた時には、二人とも老人になっていた。




「ようやく、みつけたにゃ!」

「うぬ、にゃむえまい!」

と、官兵衛と吉次郎、二人は互いに刀を構えた。

老練な二人は、最初の一刀ですべてが決まるのがわかっていたので、構えたまま、数刻が経過している。

やがて

シャー!!!!!

という、掛け声と共に、二人は相手に斬りかかった。

そして、倒れたのは吉次郎であった。




「教えてくれ、にゃんで儂の妹とお主の血を継ぐ子供を斬ったんにゃ?」

官兵衛が問うと、吉次郎は息も絶え絶えに、しかし穏やかな口調で語りだした。

「あの子は、儂の子供ではにゃい……」

「にゃんだと?」

「お主の妹は、だごんというみょうちきりんなものに凝ってしまってにゃ、よりにもよって猫というよりは、魚かカエルのようなヤツと交わったにゃ。

あの子は、お主の妹と、ヤツの子供だにゃ……」

「にゃんと……!」

「儂は恐ろしくなって、二人を斬った。

しかし、なぜかヤツは、お主の妹と、腹の中にいた子供だけのこったにゃ。

しかしまあよい、全ては終わってしまったことにゃ」

「……」




こうして決着をつけた官兵衛は、近くにあった寺に吉次郎の墓を建て、菩提を弔った後、佐賀へと帰っていった。

なお、余談だが、妹と交わったという男の人相のことを、後にそれに似た風貌が多かったらしい海外の地名から『インスマスづら』と名付けられたという。

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猫人小伝妙『旅の終わり』 今村広樹 @yono

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