往年のRPGを彷彿とさせる重厚なストーリーとバトルの数々、そして各キャラの強烈な個性に終始惹きつけられっぱなしでした。
王道のファンタジーとは、まさにこの物語のことを言うのだと思います。
最後まで読み終えた今、思い返してみますと、本作の魅力の核となっているのは「本物とは何か?」という問いかけのような気がします。
この物語には沢山のキャラクターが出てきて、各々の目的のために動いています。
彼らは立場も状況も違うけれど、皆、本物を探して生きている。
「本物」の自分。「本物」の大切な人。「本物」の気持ち――そうやって一途に追い求め続ける彼らだからこそ、私達を惹きつけてやまない強い光を持っている。そんな気がします。
……とまぁ、こんな真面目なことを書きましたが、兄貴肌のキャラだったり、有能な上に心優しき敬語のお姉さまだったり、裏と表のギャップが激しい青年だったり、年齢不詳の母親だったり、なんだかもう本当に楽しいキャラクターがてんこ盛りです。
ストーリーラインだけ辿ってみて、王道の面白さに手に汗握るもよし。
一歩踏み込んで深読みしてみて、考察の嵐に浸るもよし。
推しキャラを見つけて、我がことのように応援するもよし。
本当に沢山の楽しみ方ができる作品です。ぜひぜひ、お読みくださいませ…!
白樹の塔フレーヌに幽閉されている天然無垢な美しい少女・ブランシュ。
ある日、部屋を抜け出した彼女は、塔に忍び込んだ少年、エルスと出逢う――。
二人の出逢いをきっかけに、世界は動き出す―――。
それは、何処をめざして?
自分の語彙の足りなさがもどかしいっ!(><)
なんというか、この物語、すっごくすっごく贅沢なんですよっ!!
どう考えても別の物語で主役を張れる登場人物たち(作者様の言質付き)が、これでもかっ! と登場して、自分の想いのために、入り乱れ、活躍するのです!!
しかも、重厚に設定された舞台の上で。
これはもう、面白くないわけがないっ!!
ちょっとスロースタートなところや、世界観が重厚すぎて、固有名詞の多さに戸惑ったりしてしまうかもしれませんけれども……。
大丈夫、読み進めればいいんです!
合う方は、ばっちりハマれるはず!!
……私は、頭の先までどっぷりハマりました(笑)
様々な思惑と謎と、憎しみと祈りと愛が入り乱れ、描かれるのは、どこか歪で、けれども深く美しい物語。
芳醇な葡萄酒を大切にたいせつに味わうように。
どうぞ、この物語を味わってください。
塔の一室に軟禁され、その狭い世界でのみ生きることを許された少女。
何故塔から出てはいけないのか、いやそれどころか自分が何者なのか……
塔を訪れる者達は誰もその問いに答えてくれない。
やがて少女は当然の帰結として自らの境遇に疑問を持ち、
「外の世界」に憧れを持つようになる。
とある事件が切欠で遂に「外の世界」へ出られるチャンスを得た少女は、
そこで1人の少年と運命的な出会いを果たす事になる――
随所に謎と伏線が散りばめられ、徐々に明らかになっていく世界や
主人公の秘密……見事な構成という他ありません。
世界観もしっかりと練られているようで安心して読むことが出来ます。
またこの作品の大きな特徴として、とにかく登場人物が皆
一癖も二癖もありそうな曲者揃いという事が挙げられます。
それはヒーロー役の少年エルスにしても同様です。
(あ、因みに主人公のティアは凄くいい子です)
誰がどんな秘密を知っていて、何の目的で動いているのか……
それらが明らかにならず、いつ誰が裏切るのか解らない
絶妙な緊迫感を生み出しています。
安易な異世界転生ハイファンタジーが氾濫する中、
とても重厚な雰囲気のまさに正統派ハイファンタジーと言える作品です。
オススメです。