Red coif ～愛呪～

　人間が生み出す物は必ずしも自然にとって良いものではありえない。
　あらゆる楽を求めて生み出された文明の裏で付属として生み落とされた廃棄物。それらを食らい、突然変異を起こしたオオカミーーー通称『狼(ろう)』。
　狼は瞬く間に人間の生活を脅かす社会問題へと発展していった。
　時は狼討伐に向けて社会構造が組み立てられて暫く、狼討伐を生業とする主人公の話。
　あらゆる討伐者がギルドの傘下で得物を振るう中、主人公は頑なに孤独を選択していた。
　狼を始末する確かな強さ、その壮絶さ。狼の返り血に深く赤く染まるフード。
　人は彼女を、皮肉と畏怖の念を込めて『赤頭巾』と呼ぶーーー


　赤頭巾の下に依頼が舞い込む。かつての自分、母親、幼少期の記憶を思い返しながら、彼女は似合わぬ感情に突き動かされるように、その重い腰を持ち上げる。