To be continued...
祭礼桜子は意識を取り戻した。
彼女はユウトたち以外で伊弉冉の世界から帰還した最初の人間となった。
これは大きな一歩。
囚われた魂を現世に戻すことができる。その証明に他ならない。
奇しくも今回の事件が、その大きな足掛かりとなったのだ。
覚醒した伊弉冉を調査し、彼女のように目を覚ます人間はこれから増えるだろう。
そしてもう一つ――
「
神凪夜白は宗像冬馬の前に2種類のメモリーを置いた。
魔具の待機形態。
それはユウトの扱うメモリーに非常によく似ているが、彼の力で生成されたものではない。何より最も違うのは、この中にはワーロックにも匹敵する禁忌の力が封じ込められていることだ。
「伊弉冉を始め、パンドラ、ハンニバル、伊弉諾、そして今回のアグニとドヴェルグ……魔具の数は僕たちが想定しているよりも遥かに多いようだ。おそらく、10や20ではないだろうね」
夜白の言葉を裏付けるように、ロストメモリーには番号が振られていた。
アグニには『44』。
ドヴェルグには『37』、と。
「俺たちには知らないことが多すぎる……」
冬馬はメモリーの一つを無造作に掴んだ。
「式美に情報提供していたやつは突き止めたのか?」
「……いや……それはわからなかったよ」
夜白は嘘を吐いた。何故かそうしないといけないと思考が警告したからだ。
「……」
データを奪われたことも彼に伝えなければならない。けれど言葉は出てこなかった。
「そうか。けどこれで一つだけはっきりした」
冬馬は席を立ち、摩天楼から夜景を見下ろした。
「この世界には魔具と呼ばれる危険な力が数多く存在する。そしてそれを集めている奴がいるってことだ」
おそらくそのグループは一つではない。複数存在すると考えるべきだろう。そうした存在とどう向き合うのか。それがこれからの冬馬が成すべきことになるはずだ。
でなければそう遠くない未来、取り戻したこの日常は徹底的に破壊されてしまう。そんな予感を誰もが感じていた。
「まずは僕たちも魔具を集めよう。データは多い方が良い。きっと伊弉冉の研究にも役立つはずだよ」
「そうだな。ったく……あの海上都市での出来事の原因も、数ある魔具の一つでしかないとか……泣けてくるぜ」
この日、エクスピア内で新たな組織が創設されることが決定した。
「俺たちはまだ立ち止まれない……そうだろ? ユウト」
悪夢はまだ、終わっていない。
休む暇など無い。
奪われたものをこの手に取り戻すその日まで。
次なる戦いの産声はもう上がっていた。
劇場版 蒼眼の魔道士(ワーロック) -Lost Dreams- 完
劇場版 蒼眼の魔道士(ワーロック) -Lost Dreams- 神島大和 @Yamato
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