エピローグ
マジカル☆ロワイアルの終了をおしらせします
☆ギャンブラー
「……ここは」
扉を抜けると、ギャンブラーはどこかの小学校の教室のようなところに立っていた。目の前を見ると、机を挟むように椅子が置いてある。
「やぁ、我々はあなたが来るのを待っていました」
その片面の椅子にはあのマスクをかぶっていた男性が立っていた。彼は、くすくすと笑いつつ、座るように促す。
ギャンブラーは舌打ちをしながら、その椅子に座る。机の上には、何枚かの書類が置いてあり、それとマスクの男をギャンブラーは交互に見た。
「さて。貴方はジョーカーを殺し、願いを叶えれる立場になりました。貴方の願いをおきかせください」
「……そのまえに……質問……!山ほどある……聞きたいことがッ……!
「……ふむ。いいでしょう。幸いなことに時間はあります」
マスクの男はそう言ってにこりと笑う。いけすかない。ギャンブラーは単純にそう思った。
「……まず目的……このゲームはなんだ……?」
「ジョーカーゲームです。で、納得できません?」
「ふざけろっ……!そんなこと言われてできるか……納得……っ!」
「わかりました……仕方ない。では、教えましょう。このゲームのことを」
こほん。態とらしく咳をしてマスクの男は立ち上がる。彼を見上げる形になってしまい、ギャンブラーは心の中で悪態を吐く。
机の上にあった書類を拾い上げて、マスクの男はパラパラとめくっていく。そして、目的のものを見つけたのか、そのページの内容を読み上げていく。
「夢咲らぶ。ライブ中の事故により死亡
轟加奈。実験中の事故により死亡
坂本律。自殺。えー……」
「ま、まて……!それは、なんだ……一体!」
「何かって……そりゃ、貴方達の死因と言えるものです。もちろんギャンブラーさんも死んでますよ」
「…………」
驚きはした。しかし、だろうな。と思う気持ちもあった。そうじゃないと説明できない部分が多すぎる。
「……消えた記憶。というものはなんだ……?」
「貴方たちの中で一番心に残ってるものをいただきました。心に残ってるのだから、確か嬉しいことになりますよね」
「成る程な……」
「理解しましたか?」
「胸糞わるい……!」
「成る程……では、一難聞きたいだろうこのゲームを開いた意味を教えます。これはまぁ……所謂、実験。というか……テストというか……」
テスト。そう彼はつぶやいて、ため息をついた。紙を雑に机の上に放り投げて、それが散らばる。
「我々は常に最高のエンタテインメントを提供しています。しかし、そのためにはある程度の下準備がいりまして……」
「私たちは……利用されたというのか!?お前達のために……エンタテインメントとかいうのために!?」
「ええ。何か問題でも?」
その瞬間、ギャンブラーは悟った。こいつは人の命をなんとも思ってはいない。あの時ギャンブルで人命をチップに使ったあの金持ちより、さらになんとも考えてない。
人間が、道を歩くときに微生物を踏み潰すのを気にしないように、彼らは人間を下にも上にも見ていないのだろう。
ギャンブラーは声にならない舌打ちを鳴らす。そのときちらりと机の上に置いてある書類が視線に入ってきた。
(……私たちの情報か)
何気なくペラリとページをめくる。そこには参加者の名前、過去、性格等。そして死因が詳しく書かれていた。
ギャンブラーは何気なく、自分の記事のページを開く。記憶がほとんどないのだから、少し気になっただけだった。
しかし——
「…………」
そこには名前の欄には名無し。過去も数行で終わっており、死因はただ「衰弱死」とだけしか、書かれていなかった。
この世界に参加した魔法少女の中で、一番何もない存在。それはお前だと、その書類は生々しく伝えてきていたのだった。
「……あぁ、願い思いつきました?」
「願い、か」
「えぇ。だいたいなんでも叶えますよ。実験とは言っても、そうしないと愛護団体が少しうるさいですからね」
「……願いはある……たった一つ」
ギャンブラーの言葉を聞いて、仮面の男は小さく笑った。そしてギャンブラーの言葉を待っていた。
ギャンブラーは口を開ける。全ての罪を背負い。全ての死を背負い。そしてそれをこの世から消させないために。彼女は選択する。
「……成る程。えぇ、わかりました、貴方の願い。我々は応援します」
その瞬間。世界が光に包まれた。眩しさで思わず目を瞑ってしまう。が、それから彼女が目を開けることはなかったのだった。
◇◇◇◇◇
【メールが届きました】
【マジカル☆ロワイアルの終了をおしらせします】
◇◇◇◇◇
☆瀬戸内カヲリ
「ねぇねぇ、カヲリ!転校生来るって、聞いた?」
ガヤガヤと、騒がしい声の中から、1人の少女の声が聞こえてきた。彼女の声は、この場でもよく聞こえて来る。
「知ってる。なんか、美人さんだったよね」
職員室で、ちらりと見えたその顔は、何かとても同い年に見えるものじゃなく、大人のような美しさを持っていた。
「……あ、先生来るよ。座ろう!」
その声と共に、先生が扉をあけて入ってきた。その隣に、1人。職員室で見たあの彼女がいた。
「えー……自己紹介を頼む」
先生に言われて、こほん。と、彼女が小さく咳をした。そして、黒板に名前を書き上げて、前を向いた。
「……七志聖良……よろしく頼む」
彼女は頭を下げた。カヲルはなぜか彼女は普通の人間じゃなくて……まるで、もう一度人生をやり直してるような。そんな風にも、見えてしまう。
仲良くなれるかな。カヲルはそう考えて、息を小さく吐いたのであった。
マジカル☆ロワイアルJOKER GAME たぷたぷゴマダレ @aisu_monaka0501
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