あいつが王になってから、ろくなことがない。
流々(るる)
異世界に住まう民たちの思い
「ほんと、なんであの男が王になったんだか……。
私は非番の日だったのですが、衛兵仲間のイルミに聞いたところだと、あの男はいきなり城に現れて、先王さまに会わせろと言ってきたそうです。
もちろん門前払いで追い返したのに、どこからか魔法のカギを入手していたらしく、裏門から城内に……。
その後で、何が起こったのかはわかりません。
はっきりしているのは、先王さまがいなくなられ、あの男が玉座に座っているということです」
「まったく、あいつが王になってからろくなことがない。
みんなで、この国を作り上げるだぁ? 先王さまはそんなことなんか一度も言わず、ご自分で何でもやってくださった。
敵との戦いにも自ら先頭に立ち、あの偉大な魔力でなぎ倒していたからな。
我々にも戦利品を分けて下さったり、いい方だったのに。
噂じゃ、あいつはいきなりミルキの牧場へ風のように飛んできたらしいじゃないか。どこの馬の骨とも分からねぇヤツが偉そうにしやがって。
あいつは、一緒に働きましょうだの、作物を育てましょうだの、自分が楽をしたいだけだろうが」
「キルア将軍が討ち死にされたと聞いた時は、耳を疑ったよ。
将軍は俺にとって憧れの英雄だった。先王さまの片腕と言われていたあの方が敗れるなんて……。
ヤツが城内に進入し、謁見の間へ踏み込んだ時に将軍と対峙したそうだ。ヤツは下っ端には目もくれず、チーターだか何だか訳の分からない能力を操り、将軍を倒しにかかった。あの方は先王を守りながら最後まで勇敢に――くそっ! 俺にもっと力があれば。力を、もっと力をっ!」
「わたくし、あのお方が怖いんです。何を考えているのか分からない、あの細い目で見つめられると体の芯から震えがきます。
王が代わっても、侍女たるもの、きちんとお務めを果たさねばいけないのは分かってはいるのですが。
先日お休みを頂いた際に、城下のまじない小路へ行ってまいりました。評判の占い師アルカに先王さまのことを見て頂いたところ――もっと近くへ来てください。誰かに聞かれたら大変です。
先王さまはどこかに封印されていて、それを解くには魔法の呪文が必要だと言われました……。それさえ手に入れば――いけないっ、こんな時間だわ。
お城へ戻ります」
「おそらく、あの者は『転生』と呼ばれる技法で異なる世界からやってきたのじゃろう。我々ミンク族のような体を覆う毛もなければ、竜族のような鱗もない。どんな世界にいたのかは分からぬが、おそらく我々の世界に来た時にチートと呼ばれる能力を得たはずじゃ。
ならば、先王を封印した魔法もあの者がいた世界のものではなく、この世界に存在しているはず。虹を越えたところにある
「もう我慢できないっ!」
「
「みんなで立ち上がろう。革命だっ!」
「
「安心して暮らせる我々の国を取り戻そう!」
「
「
あいつが王になってから、ろくなことがない。 流々(るる) @ballgag
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