二人のヒロインの数奇な運命が動き出す。絵画の謎を巡る情熱のストーリー!

『むくのアトリエ β』のヒロイン・むく。
本作『さらば孤高の黒龍、Aya』のヒロイン・Aya。
この二作品は、同一のストーリーをそれぞれのヒロインの視点で書かれています。
つまり、それぞれ別のシーンもあれば、同じシーンを繰り返すエピソードもあるわけです。

「同じシーンを別視点で繰り返す」
ときどき見る手法ですが、書き方によっては「また同じシーンを読むのか…」としつこく感じてしまうことがあります。
でも、この二作品にはそれがまったくありませんでした。
別々のエピソード分量が多いというのもありますが。同じセリフ、同じシチュエーション、同じ動きが出てきても、読むたびにより深く心に染み入り、ゆっくりじっくりと味わえるのです。

二人が見せてくれる物語が、それだけ多くの感動を与えてくれるからだと思います。
シンプルでありながら、時にドキッとするようなセンスを感じる文章。激しさはないけれど、切々と、優しさに満ちた言葉を投げかけてくれる作者の筆致が、うまく言葉にできないほどの大きな感動を呼び起こすのです。

二作品とも読んでよかった、と心から思います。
どちらからでもかまいません。ぜひ、二作品とも読んでほしい。
この感動を、違う角度から繰り返し味わってほしいと思います。