第3話 今どんな気持ち?
俺を殺そうとした正義のヒーロー君を運良く殺す事が出来た俺は、感情一つと代償に、アイツの力を得た。そして、俺に『死』を命じた上の人間を殺す事を決めた。
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歩きだそうとしたとき、俺はある事に気がついた。
「さっきまで日本刀みたいな形状だったのになんで今はこんな悪魔が持ちそうな剣になってるんだ?」
《ご主人さまのぉ、心の色が剣に現れるんですよぉ》
「おい、お前さっきと喋り方変わってないか?」
先程の“主人”って感じの堅苦しい雰囲気とは打って変わってなんか、気持ちが悪いな
《それはぁ、ご主人さまの“優しさ”を譲り受けたからですよぉ》
俺の“優しさ”ってこんな気持ち悪かったのだと思うと吐き気がするが、まぁでも生まれてこのかた誰かの優しさに触れたことがなかったからなぁ…仕方がない気もするが。
「それはわかったが、その《のぉ〜》ってやつは止めろ」
《わかりましたぁ…あ、んんっ、わかりましたご主人さま♡」
言葉の最後にハートが見えた気がしたが気のせいだろう…
《私の今の形状は北欧神話に出てくる命を奪うまで鞘に戻らない剣、ダーインスレイブです》
「そりゃ俺向きでなによりだ。そしてもひとつ質問だが、“優しさ”を渡したのに俺の性格が変わっているように感じないんだが?」
《“優しさ”のカタチは人それぞれです。それに私とご主人さまで感情の譲渡をしたのでご主人さまから私、私からご主人への“優しさ”
は感じることができるんです!》
「長い説明どうも」
まぁそのへんの何とかは知らなくてもどうにかなるだろうから、聞いといてなんだが、あまり聞いていなかった。
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「006!お前!生きてたのか!?」
仲間達だ。いや、かつての仲間達だ。006というのは俺につけられた番号だ。糞が。嫌なことをおもいださせる。
「おお!お前らも無事だったか。」
もちろん演技だ。こいつらはどうしようか
まぁ大した脅威にはならなそうだし…
《ご主人さま、見逃してあげてもいいんじゃないですか?》
「ああ、そうだな。」
もちろん殺した。
なるほど、これが優しさのない俺か。多くの時間を共に過ごしてきたが、力を持った俺からすれば今は俺に群がる虫同然だからな。
当然、蹴散らす。
そこで気がついた
今この組織を壊滅させても外の馬鹿共はあの正義の味方君が命をかけて壊滅してくれたんだなんて考えるだろう。考えすぎかもしれないが一応だ。
別に、名声が欲しい訳でも感謝してもらいたいわけじゃないこの組織のトップを多くの人間を観客にして公開処刑したい、それだけだ。
《殺さなくてよかったじゃないですか〜》
「外に出よう」
《ちょっと私の話は〜》
「外を、外の世界が見たい」
《行ったことないんですか?》
「無い」
そう言えば生まれて17回目の今日まで、ずっとこの中だったからな。軽く見物するのも悪く無い。
来た道を戻ると薔薇の花びらが敷き詰められたように真っ赤な鮮血の上を歩いている俺だが、特になんとも思わないのは優しさが無いからだろう。
門をくぐると賑やかな街と俺の門出を祝うようにどんよりとした雨雲が広がっていた。
ごめん、手が滑った。 ノラ猫少尉 @gakkan
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