こいつ、動くぞ! ――モーフィング翼
以前に公開したエピソード、「空港上空渋滞中 ──後方乱気流」(https://kakuyomu.jp/works/1177354054885557884/episodes/1177354054893633518)で、少しだけ言及した「ウィングレット」と呼ばれる、飛行機の翼端に付けられた小さな構造体。決して格好良さを追加するためのものではなく、抵抗を減らすための部品です。流体(空気)の中を進むことで翼端から後方に翼端渦と呼ばれる渦ができます。この翼端渦が抵抗となり、飛行機の燃費を悪くします。ウィングレットは、翼端渦を分散あるいは低減させることで、抵抗を少なくする目的で作られています。
ウィングレットには、さまざまな形状形態があり、機体にあった最適な形状が現在でも模索されています。たとえば、エアバス社は下記のようなコンセプトデザインを発表しています。
An Airbus futuristic conceptual airliner “takes flight” to inspire next-generation engineers
https://www.airbus.com/newsroom/news/en/2019/07/airbus-conceptual-airliner-to-inspire-new-generation-engineers.html
見てもらえればわかると思いますが、非常に有機的なデザインです。「新幹線のノーズはなぜ長い?」(https://kakuyomu.jp/works/1177354054885557884/episodes/1177354054890039190)でも紹介した生物模倣、バイオミミクリー(バイオミメティクス)の思想ですね。
このコンセプトデザインで目に付くのは、垂直尾翼がないことと翼につなぎ目がないことです。ラダーやエレベーターなどはどこにあるの? と思うかも知れません。実は、翼が変形するのです。記事の中で「
現在の航空機では、方向舵や補助翼など可動部分は別の部品で構成されているため、どうしても隙間ができます。こうした隙間は流れを乱す(乱流を生む)要因となるため、できるだけ少ない方が良いのです。そこでつなぎ目のない一体の翼が変形する技術として研究されているのが、「モーフィング翼」です。
モーフィング翼では、アクチュエーターのような翼の内部で形状を変化させるためのしくみが必要になります。現在主流となっているのは、
モーフィング翼は、世界各国で研究が進められていますが、実用化までにはもう少しかかるでしょう。内部構造もそうですが、変形に耐えうる素材とか変形に要する時間の短縮とか、まだまだ課題は多いと思います。でも、そう遠くない将来、生き物のように翼の形を変える飛行機が登場するとしたら、ちょっとワクワクしませんか?
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