クルードラゴン、ISSへ
5/30に打ち上げられたSoaceX社のクルードラゴンが、無事にISSとのドッキングに成功しました。採集実証実験とはいえ、アメリカが有人のロケットを飛ばしてISSまで行けたということは、非常に大きな意味があります。そのポイントを、私なりにまとめてみます。
・アメリカで開発してアメリカで打ち上げることの意味
スペースシャトルの退役から九年。この間、アメリカ(に限りませんが)はISSへ人を送り込むために、ロシアのソユーズを使わせてもらっていました。米ソ冷戦時代を知っている者からすれば、時代が変わったんだなぁと思わずにはいられませんが、アメリカ人にしてみれば、忸怩たる思いを持っていた人も少なくないと思います。その分、アメリカもロシアに費用を支払わなければなりませんしね。
だからこそ、NASAも「LAUNCH AMERICA」という標語を前面に押し出しているし、トランプ大統領も打ち上げに立ち会ったりしたわけです。これは私の妄想ですが、NASAが使っている今回のミッションロゴ、ISSの形がアメリカのシンボル、白頭鷲に見えません?
話をクルードラゴンに戻して。
アメリカのプライド以外にも、安全保障の面から考えてソユーズに依存することは問題があります。振り返って考えてみれば、ソ連が初めて人工衛星を飛ばしたことによる「スプートニクショック」、六十代以上はあれを体験しているわけです。あの恐怖を。今と違って、第二次世界大戦の直後ですからね。そりゃ、アメリカも必死になって宇宙開発するわけですよ。
それが冷戦が終わって、ソ連が崩壊して、なんだかんだあってもロシアとは一緒に宇宙開発してきて、で、アメリカにはスペースシャトルがあるぜっ! って息巻いていたのに、コスト的に採算が合わなくなってシャトルが廃止されたら、あれ? ロシアに頼るしかない? これ、ヤバくね? って思ったんでしょう。いや、思ったかどうかは判りませんが(^_^;)少しは危機感持ったのでしょう。じゃぁ、ロケットを飛ばそうとなった時、スペースシャトルに全振りしちゃったNASAには、ロケット開発の体力がなくなっていました。
・民間宇宙船であることの意味
いざ、ロケット開発を再開しようとしたときに、NASAには人員も予算もありませんでした。では、どうするか。民間に任せましょうということになったわけです。丸投げという訳ではありません。NASAが審査して、見込みのある企業に予算を割り当てました。プロジェクトの開始直後は数社ありましたが、現在ではボーイング社とSpaceX社の二社に絞られています。しかも、SpaceX社の参入は後から参入したんですよ。
複数の民間企業に開発を委託することで、競争原理が働き、より早くより良い物ができるというNASAの目論見は成功したと言えるでしょう。もちろん、事故が起きないようNASAが手綱を締めていたとも言えますが。
民間企業からすれば、失敗のリスクはありますが、NASAからアドバイスはもらえるし、NASAの試験設備や打ち上げ台が使えるというメリットがあります。なにより政府のお墨付き。そして、開発した技術は、今後ビジネスに活用できるのです。NASAの宇宙タクシー構想が実現すれば、ISSやその後継、(あるいは月軌道のゲートウェイ)への人員輸送を請け負えるだけでなく、宇宙ホテルとかいろいろ夢は広がります。何しろ、ヴァージン社のサブオービタル往還機よりも高い軌道に行けるのですから。
ビジネスを考えていることは、搭乗員の宇宙服デザインに現れています。宇宙服は、ハリウッドのデザイナーを起用したそうで、アポロ計画の時の言っちゃあわるいが野暮ったい宇宙服より、断然未来的で格好良い。クルードラゴンの内部も、すっきりとして未来的。操縦もタッチパネルですからね。といっても、ほぼオートなのですが。
・そしてこれから
当然ですが、今回はデモフライト。これまで繰り返してきた試験の延長です。七月あるいは八月と考えられている本番では、JAXAの宇宙飛行士野口さんを含め、四名がISSへと向かいます。これが成功してこそ、本当の成功です。たぶん、ボーイング社も負けていないでしょう。
また、本家本元のNASAも月軌道、そして火星軌道までを視野に入れたSLSロケットとオライオン宇宙船の開発に取り組んでいます。来年打ち上げ予定でしたが、たぶん延期されるんじゃないかなぁ。いや、むしろこの時期に良く飛ばしたなぁ>クルードラゴン。
アメリカは、民間活用による宇宙開発をうまく推進しているように見えます。ロシアも新しい宇宙船を開発中ですし、中国も同様です。インドもあなどれません。翻ってみて、日本はどうなのよ。やはり有人飛行の夢を持っている人はたくさんいますし、ISTみたいな民間ロケット企業も出てきました。次期主力ロケットのH3なんかは、三菱重工主導と言っても良いかもしれません。機運は高まっているようにも思えますが、結論から言えば、日本の有人ロケットが実現することは、今後二十年はないでしょう。
たしかに、軌道上まで運べるロケットは作れるでしょう。しかし、有人となると生命維持の技術や、万が一に備えた装置の開発も必要です。そして、それらを試験する設備や基準作りも必要です。日本にはそれがありません。悲しいけれど、それが現実。この状況を打ち破るには、宇宙開発技術に理解のある議員を国会に送り込む必要があるでしょうねぇ。とほほ。
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