めぐりあい、宇宙(そら)――ランデヴー技術

 2020年2月26日、ノースロップ・グラマン社の衛星「MEV-1」が、通信衛星「インテルサット901」とドッキングに成功しました。軌道を維持するための燃料(推進剤)が不足していたインテルサットに代わって、今後五年間、軌道修正を行うそうです。


 人工衛星の耐用年数は、おおむね五年間です。多くは推進剤の搭載量で耐用年数が決まってしまいます。つまり、推進剤を補充することができれば、もっと寿命を延ばせる人工衛星はたくさんあるわけです。


 「MEV-1」自体の耐用年数は十五年だそうです。しかも、ドッキング機構は再利用できるので、別の人工衛星に再ドッキングし寿命を延ばすこともできるのです。これは、人工衛星の寿命延長サービスという新しいビジネスなんですね。

 日本でグラマンといえば、戦闘機とダグラス・グラマン事件ですね。ロッキード事件と並ぶ、日本の汚職事件。なので、個人的にはあまり良いイメージはありませんが。


 今回は、人工衛星が人工衛星をキャッチして、代わりに軌道修正をするという形態ですが、そのうち、推進剤だけを補充するような形態の衛星が出てくるかも知れません。カートリッジ交換式になるか、空中(宙中?)給油式になるかは分かりませんが、たぶん、どこかで研究はされているでしょう。


 こうした燃料補充の技術が実現すれば、人工衛星一基の寿命を延ばすことができるので、コストダウンになるかも知れません。打ち上げ回数は減るかも。ただし、まだまだ技術的な課題は多く残されていますね。ランデヴー/ドッキング技術とか軌道制御技術とか。


 宇宙空間でのランデヴーは、1960年代からさまざまな形で検討されてきました。ジェミニ計画では、六号と七号ふたつの有人宇宙船が三十センチの距離まで近づいています。ジェミニ八号では衛星とのドッキングも行われています。

 歴史的なドッキングといえば、「アポロ・ソユーズテスト計画」で実行された、アメリカのアポロ宇宙船とソビエト連邦(当時)のソユーズ宇宙船のドッキングでしょうか。ドッキングが行われた1975年といえば、緊張が緩和していたとはいえ、まだアメリカとソビエト連邦が対立している冷戦時代です。よく実現したものです。

 当時、アメリカでは月着陸で熱狂的に盛り上がった宇宙への関心も次第に薄れ、アポロ計画が縮小された時期です。実際、アポロ宇宙船としては、これが最後のミッションとなりました。


 日本では、技術試験衛星VI号、「きく7号」においてドッキング技術の実証が行われています。この人工衛星は、打ち上げ後に「おりひめ」と「ひこぼし」ふたつの衛星に分離、その後、三回のランデヴー・ドッキングシークエンスを実行しています。この技術は、国際宇宙ステーション(ISS)へ物資を運ぶ「こうのとり(HTV)」のドッキングにも活用されています。ランデヴー・ドッキング技術は、人工衛星やISSへの補給以外にも、大型のスペースデブリ回収や小惑星の探査などにも役立ちそうです。


 ランデヴー・ドッキング技術に欠かせない技術が、軌道制御技術です。地球から衛星の軌道を監視して、軌道がずれれば遠隔操作で修正するという方法がとられてきましたが、今は衛星が自分で考えて軌道を修正する、自律飛行の研究が行われています。ただ「自分がどこにいるのか?」という情報を取得するのは、なかなか難しいのです。なので、GPSを利用して自分の位置を正確に測る、なんて技術もあります。




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 KAC2020用に【出張版】科学技術の雑ネタを公開しています。


はやぶさ2はUターンしない

https://kakuyomu.jp/works/1177354054894551152/episodes/1177354054894551315

宇宙に種を蒔く ~パンスペルミア説

https://kakuyomu.jp/works/1177354054894596980/episodes/1177354054894596992


 同じ小説のタイトルが使えたことにびっくり。URLが変わるからいいのだろうけれど。


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