IHクッキングヒーターのしくみ

 「身近な電磁誘導」(https://kakuyomu.jp/works/1177354054885557884/episodes/1177354054885733744)の回では、電磁誘導の例として非接触ICカードを取り上げました。しかし、電磁誘導を利用した機器はICカードだけじゃありません。 結構見かけるようになったIHクッキングヒーターも、電磁誘導を利用した家電です。そもそもIHとは、インダクションヒーティングInduction Heatingの略で、日本語では「電磁誘導加熱」と呼ばれるものです。つまり、電磁誘導による加熱ということですね。


 IHクッキングヒーターの構造は、コイルの上にトッププレート、鍋などはトッププレートの上に置く形になります。コイルに電気を流すと、磁界が発生します。同じ電磁誘導でも非接触ICカードとは逆で、コイルに電気を流すことで磁場を作り出すわけです。子供の頃に理科で習った電磁石と同じですね。

 トップコートは、結晶化ガラスなど磁力を透過する材質でなければなりません。磁力によって影響を受けないので、電源を入れた状態でトップコートに触れても、熱くないのです。そのトップコートの上にIHに対応した調理道具を置くと、磁力が調理道具の中を通る事になります。もし、コイルを流れる電流が直流であれば、磁界に変化はないため急激な変化は起こりません。しかし、家庭用電源は交流なので、コイルを流れる電流の向きが変化し、電磁誘導による磁界も変化します。

 磁界の中に存在する金属(導体)の内部では電位差が生じ、渦状の誘導電流が生まれます。この渦電流は、磁界を妨げる方向に流れます(レンツの法則)。金属が電気を通しやすいと言っても、抵抗はゼロではありません。調理器具の内部では、渦電流への抵抗が生まれ発熱(ジュール熱)するわけです。


 家庭用電源が交流でなかったら、交流に変換しなければならないところでした。テスラ万歳! ……って、「直流 VS 交流」のネタ書いてなかったっけ? 近々、そんな映画もやるみたいだし、旬なうちに書きますかねー。


 さて、話を戻して。

 IHクッキングヒーターが、磁場の変化で発熱させていることはおわかりいただけたかと思いますが、磁力を透過するような材料では、渦電流が起きないので発熱しません。発熱させるためには調理器具の材料が重要になります。いわゆる「IH対応」って奴です。

 IHクッキングヒーターが出始めた頃には、対応する器具も少なかったのですが、ヒーター側の機能向上もあり、現在では対応する調理器具も増えています。


 IHクッキングヒーターは、直接火を使わないのでガス漏れや火傷の心配はありません。小さいお子さんや認知症の方がいる家庭は、IHクッキングヒーターの方が安心ですね。ガスに比べると細かな温度調整も可能ですし、フラットなので汚れても掃除しやすくなっています。また、火力に関しても以前よりも大きな出力が出るようになっています。

 電気しか使わないので、二酸化炭素を排出しません。ただし、ガス擁護派からは、発電時点まで含めれば、ガスの方が二酸化炭素排出量は少ないという意見もあるようです。また、電磁誘導による電磁波の人体への影響を不安視する声もあります。



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