身近な電磁誘導

 リニアの話(「リニアでGo」https://kakuyomu.jp/works/1177354054885557884/episodes/1177354054885689262)でも登場した「電磁誘導」。現象としては、磁界の変化によってコイル内に電位差(電圧)が生まれる、つまり磁石とコイルがあって、どちらかを動かせばコイルの中に電流が流れるというものです。リニアのような巨大なものだけでなく、私たちの生活に深く関わっている科学技術のひとつです。


 代表例のひとつが、Suicaなどの非接触ICカードですね。改札などのリーダーにカードを近づけることで、カード内のコイルに電流が流れICチップが作動、通信を行うというしくみです。Suicaでは、SONYが開発したFelicaという技術が使われています。マイナンバーカードもFelicaですね。

 Felicaは非接触ICシステムの国際基準にはなっていますが、One of Them、いくつかある規格のひとつでしかなく業界標準とは言えません。そのうち、世界統合基準が生まれる……かなぁ。このへんは、企業同士のせめぎ合いや国家戦略の違いとか、いろいろあるので。Felicaでおもしろいのは、一枚のカードに複数のアプリケーションを入れることができる点ですね。だから、社員証と支払の両方に使えたりします。


 一方で、ICチップを、体内に埋め込むなんてことが海外では行われています。日本でもペットの識別にチップを埋め込んだりしていますね。簡単な施術(太い注射針で差し込む)で埋め込むことができるようですが、電池内蔵式だと交換の必要性が出てしまうので、これも非接触IC技術が使われます。SF的には、電磁誘導なしに体内電流でICが駆動する、なんて方が面白いガジェットだとは思いますが。

 手術で埋め込むのはなぁと思う人向けには、皮膚に直接回路を印刷する技術、あるいはシール型の電子回路なんてのも研究されています。これなら要らなくなった時に剥がせるので、安心出来るかも知れません。


 話がICカード中心になってしまいましたが、IHクッキングヒーターも電磁誘導(誘導加熱)を利用しています。


 最期に、そもそもなぜ磁界が変化すると電位差が生まれるのかというと、磁界の変化によって「電子スピン」の状態が変化し、金属では原子間で電子のやりとりされます。電子が動くことで、電位差が生まれ電流が流れるということです。学術的には電磁気学、量子力学の範疇ですね。


【追記】

身近な電磁誘導の例として、IHクッキングヒーターのしくみを紹介します。

https://kakuyomu.jp/works/1177354054885557884/episodes/1177354054894702463

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