第99話ご愛読ありがとうございました!

 99話もお読みくださった方々へ。

 いつもお世話になっております、とご挨拶するのはだいぶ作品の趣旨と異なりますが、ここは感謝とお礼の気持ちをはっきりと明記しておきたいです。


 第99話でこのでこぼこエッセイは終わります。

 けれどわたくしには女神とナンバーズ(他人格)が必要なので、また別の形で書かせていただくことになると思います。

 ていうか、99話目もちゃんと書くのですよ!



 正月早々、親族の集まりで妹夫婦がやらかした。

 年の初めの宴席で、夫婦喧嘩。

 巻き込まれた周囲は唖然。


 妹へのモラルハラスメントがあったことをはっきり書く。

 大勢の親族の中で大声で妹の旦那が、

「おまえはだめなんだよ、(息子)の教育にしろ、なんにしろ。おまえが引っ張るから(息子)は空手もやめちゃったし、こんどは野球。おまえのせいなんだよ!」(意訳)

 というので、妻はぷっつんキレて泣きだしてしまった!


 妹も抵抗はしたけれども、

「それはこうでしょ、ああでしょ、あなただってそうじゃない」

 と言うと、旦那が遮って

「それは終わったこと。だいたいおまえは家事も雑で、オレがやれば完璧なのにおまえは駄目でしょ?」

 とやるので妹(妻)はついに顔真っ赤にしてテーブルを蹴っとばす始末。


 ……家族は護らねばなるまい。

 妹はずっとこの攻撃に耐えてきたのだ。

 昨年末の祭りで集まったとき、様子がピリピリしてて変だと思っていた。

 宴席で顔を合わせたときは弁舌なめらかで明るい笑顔で踊ったり歌ったりだったから、解決したんだと思ったのに。

 小学生になったばかりという、その息子に「あなたの命は誰のもの?」という質問をしたら「わからない」と答えた。これは、危険信号だ。息子が、だれを中心に世界が回っているのか、定かでない。母親が窮地に立たされている証拠だった。


 わたくしは立って叫んだ。

「外でやってください!」

 と何度も。

 夫婦喧嘩を子供らの前で見せるのはマイナスだ。

 立ち上がる妹の旦那に、

「もう、ここへは来ないでください」

 と言った。

 妹の旦那は

「ああ、来ないよ」

 とみんなの視線を浴びつつ傲岸に言った。

 わたしは男のメンツをつぶしたいわけではないので、重ねて言った。

「あなたは男らしくて、立派ですてきな人だと思ってる」

 もちろんその逆。

「だから、二度とここには来ないで!」

 相手は言葉を無くしてしまった。


 わたくしは今度は泣いてる妹を立たせて部屋へと招いた。

 動こうとしない妹を末の妹が連れて来た。

 わたくしの部屋で姉妹会議。

「……大体、あのひと、あんたの家でなんであんたに偉そうなの? お金の管理どうなってるの?」

「……」

 妹は旦那の仕事がうまくいってないということをもらした。

 だが、彼女の不満はそこではなかった。

「ス*ッチを買ったとたん、ゲーム三昧で何度言っても時間制限を破る。そのくせわたしが悪いと思ってるところを人前や、久々に会ったお父さんの前であげつらって……」

 もう、夫婦仲は冷めきってるんだそうだ。

 言外に、彼に愛情がない、冷たい、傷つけられたと言っている。

 彼女はやさしい家庭愛に満ちたコミュニケーションをとりたいと願っているのにそれが叶わない、その上親族の前で恥をかかされたので取り乱してしまった、というわけだ。


 わたくしは彼女にいくつかの提案をした。

 彼女の気が晴れることをしたなら、状況改善につながるのではないかと。

「家から追い出しなさいよ。一人でやっていけるようにお金管理をちゃんとして」

「(頭に来たときは)頭から、冷たい水をかけてやる」

「スイ*チを捨ててしまう」

 などなど。

 妹は、

「持ちつ持たれつなの」(要するに切り離せない)

「そんなことできない」

「ゲーム機は高い」

 と反論する。

 お互い依存関係にあり、妹は善良なために抵抗手段を奪われ、家庭を高いゲームにバラバラにされている、ということになる。

 末の妹が、培ってきた共感力を発揮して、

「でもあの人にもいいところがあるんだよね?」

 と寄り添うので、ついに妹はうつむいて、

「うん……」

 とか弱く頷いた。

 その瞬間、わたくしに天啓が降った。

 やらねばならない。

 しかし、繰り返し妹には言っておくことがあった。

「大丈夫、お父さんはあなたの味方だから」

 念を押してわたくしは意識をあえて飛ばした。

 言っておくが、これは自由にコントロールできるわけではないのだ。


「キライダ……あんな奴、ダイッキライダ!」

 ダークな声が胸からくぐもって響く。

 この想いは、今言っておくしか手立てはない。

「ダイッキライ!」

 わたくしが言い放つと、妹たちは、驚いたように私の顔を凝視した。

 末の妹は、

「それは感情的だよ」

 と言う。しかし、こんがらがっているのは妹の感情。それを無理に筋を通そうとするから、うわべの不幸にとらわれる。

 わたくしの腹は据わっていた。

 妹の気持ちは父を頼ってみよう、話し合ってみようという方向へ変わったようで、再びリビングに戻っていった。


 しばらくぼんやりとして、廊下から子供たちの声が聞こえたので廊下に出た。

 末の妹の旦那さんが子供たちを公園に連れて行って遊んでくれていたらしいのだ。

 いまキッチンへ行かれるのはマズイ。

 喉が渇いたと言うので、自らコップと麦茶を持って玄関先へ。

 もういちど遊びに行ってもらうことにした。


 再びリビングに戻ったとき、話は大詰めだった……はずなのだが。

 父が原始人が原始の時代をどう生き抜いたか、という話をしている。

「なんで原始時代に戻るんだ」

 わたくしはついツッコんでしまう。ちっちゃくだが。

 原始人ってなんだ?

 原始人の男は、女に食べ物を運ぶかわりに女のできない仕事をしてきたのだと。

 その原始的な結婚生活が今のわたくしたちの何に関係するのだ?

  太古の昔、女性は太陽であった――

 という一文を思い出す。

 妹に女性としての誇りを取り戻せ、という訓示であろうか?

 それとも、「わたしは原始人ではない」と新たな境地に至らせるための前置きであろうか?

 それともそれとも、男が懸命に女を養おうとしているのだから、もっとおおらかにとらえ、夫を癒してやりなさい、とでも?

 わたくしは子供たちにアイスを配り終えると、現在の話をしようと、その輪の中に飛び入りで話しかけた。

「――で、ホウレンソウを妹がしないそうだけれど、そういう旦那さんはホウレンソウしてるの?」

 と、ぐったりしている妹の旦那に話を向ける。

 すると、見る間に勢いを取り戻し、彼は、

「してるよ。会話の中で、盛り込んで」

 ふむ。それなのに妹からは他愛のない、結論も見えないくだらないおしゃべりばかりでいい加減にしてよ、というのだった。

 それは、夫からのホウレンソウを受け止める基盤が妹になかったということだ。

 そして、話の中で「泣くのはズルい」と言い始めた。

「なんで泣くの?」

「しらない。あんまりにもあんまりなので、勝手に出てくるの」

 と妹は憮然。

 妹は泣き上戸だったろうか? そういえば学生時代、テスト用紙に向かうと泣けてくる、実際泣きながらテストを受けてきた、と言ってたな。


 とにかく、旦那の方にも不満がたまっていたことが判明。

 お互い、相手の話を真剣にとらえてなかったので、自分は理解されてない、ないがしろにされている、と感じていた模様。

 妹が旦那からのメッセージをメモかなにかに書きつけるなどして確認をとり合えば、その半分は解決するのではないかと思った。

 なにより、コミュニケーションが復活する。

 そのためにはお互いの努力を認め合うことが大切、と認識した。

 まあ、妹にホウレンソウしてくる時点で、愛情の有無はわかりそうなものだけれどな。受け止め方の違いだ。





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