最終話 不思議な雨の日の記憶
人生における意味を考えていた。
自らの意思とは関係なく人は生まれ、そして自我を持ち、気が付けば人生という名のレールを歩み始めている。
神様とはご都合主義なもので、僕達をレールの上には乗せるのだけれど、その行く先を示してはくれない。
だから、僕達は自分の手でレールを敷かなければならないし、自分でゴールを探さなければならない。
周囲の環境や人との出会いによる様々な岐路を選択しながら、自ら目標点を設定し、努力をし、小さな目標を通過していく。
そうして人生における大きな目標を見つけた中で、僕らは一つの疑問に答えを出す。
「自分の生きる意味は何だったのか」
人生を与えられた段階では決して示してはくれなかった目標を、僕らは自ら導き出すことで自分に生きる意味、価値を見出している。
果たしてそうなのだろうか。
雨が降る。
僕だけしかいなくなってしまったこの公園に、彼女の流した涙が降る。
たったの四日。
たった四日間を過ごすために、小晴は十七年間の努力をしてきた。
そしてその努力で僕に夢と目標を与え、彼女は今、この雨を降らせている。
小晴はそこに意味なんて見出していたのだろうか。
いや、そんなはずがない。
四日間で消えてしまう自分自身の存在に、あのうっかりさんが生きる意味を考えていただなんて僕には考えられない。
代わりに、小晴は常に笑っていた。
雨を降らせるという目標を達成すると同時に自分の命が消えてしまうことを知りながら、彼女はいつも笑顔で僕と接してくれていた。
そこに、意味なんてなかっただろう。
小晴は自分の人生が、レールがあと少しで終わってしまうことを知っていても、今現在を充実させようと懸命に生きていたのだ。
僕は野球という目標を見失ってから、何をすればいいのか分からなかった。
目標を見失って、夢や希望がなくなって、生きる意味を必死に求め続けていた。
でも、今は違う。
小晴という存在が、僕にそれを教えてくれた。
だから…
「ありがとう、小晴」
彼女に感謝の祈りを捧げて、僕は公園を後にする。
この電車の行き先は分からないけれど、レールの上を全速力で駆けていく。
そうして僕の歩んだ道が、幸せな人生になると信じて。
「小さな夢でも、夢は夢です」
そう語る小晴の笑顔が頭に浮かんで、僕はまたひとつ頑張れるような気がしていた。
雨模様の空は、やがて七色の虹へと変わるのだろうと僕は確信している。
その虹を見るために、今はこの雨に打たれていようと思った。
いつか、この雨すらも止んでしまうのだから。
不思議な雨の日の記憶~アメアガリ~ 香月てる @katsuki_teru
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