第4話

ヒロキは街ゆく人の声で目が覚めた。いつもなら街の人の声で目が覚めるなんてありえないだろう。しかし今日は特別だった。今日大会決勝があるからだろうかいつもではありえないほどに賑わっていた。「うるさいなーいつも決勝はこんなにも人が多いのか?」「うーんこんなに多いのは初めてかも」「そーなのかってかやばいこの人混みだったらコロシアム行くのに時間かかるだろ急がないと間に合わないぞ」「ホントだ急がなきゃ」二人は慌てて身支度を整え宿を出た。

「人多かったなー早めに出て正解だった」1時間も前に宿を出たのにコロシアムに着いたのはたった決勝戦のトーナメント発表5分前である。「決勝戦出場の選手はこちらへお願いします。」その声に促され二人は奥へと入っていった。

「さて皆様この大会もいよいよ決勝戦となりました。皆さん楽しみですか?」「ウォー」司会の人が呼びかけるたび会場はすごい歓声に包まれる。「そんな決勝戦に勝ち上がった選手をこれから発表して行きますよー」「ウォー」「まずは決勝戦第一試合で戦うAブロック勝者火魔法の使い手ヒロキぃーー」「ウォー」「続いてBブロック勝者水魔法の使い手ジュリアーー 」「ウォー」「続いて第二試合で戦うCブロック勝者風魔法の使い手サキーー」「ウォー」「続いてDブロック勝者土魔法の使い手ダイチーー」「ウォー」「この4名で決勝戦を戦って貰います。第一試合は40分後開始致します。それでは発表を終わります。」

発表式が終わり控え室へ行くとどうやら4人全員同じ控え室になっていた。控え室に入ると一人の女性が話しかけてきた。「ねぇあなたがヒロキよね?」「ん?あぁそうだがあんたは?」「いやいや対戦相手のことぐらい知っててよ。私が次にあなたと戦うジュリアよ」「あー、そうかそうかよろしくな、次の試合楽しもうぜ」「楽しむ?何を馬鹿なこと言ってるの?試合には勝つか負けるしか無いわ楽しむとか言ってる奴に負ける気はないから、少し期待してたけどガッカリだわじゃあね」そう言って去っていってしまった。「ねぇあの人ジュリアさんよね?何話してたの?」「あぁサキか宣戦布告?されてた」「そうなんだーそれより約束覚えてる?」「あぁ優勝争いは俺たちでって奴だろ?」「うん負けちゃダメだよ」「お前こそな」「おいおいオレは踏み台かー?」「えーとダイチだっけ?そんなつもりは無いぞだからこうやって負けるなよって言ってるんだから」「ハイハイそうですかー」そうブツブツ言いながら去っていった。「急に何だったんだアイツ」「さぁ?そんなことより大丈夫なの?ヒロキ相性悪そうだよ」「そっちこそ大丈夫なのか?相性悪いだろそっちも」「そうねまぁ何とかするわよ」「そうかこっちもなんとかなる」

「決勝戦第一試合に出場される選手の方はゲートに入場してください。」その放送を聞きジュリアは控え室を出ていった。「じゃあ俺も行ってくる」「うん、行ってらっしゃい」

「さぁさぁ皆さんおまたせしました。決勝戦まもなくスタートです。おぉっとまず入場してきたのは水魔法の使い手ジュリア選手ーそれを追いかけるように火魔法の使い手ヒロキ選手ー」「それでは両者揃ったところで改めてルールの説明をします。まぁ今までと全く同じですね。以上バトルスタート」「バンっ」と銃声がコロシアムに鳴り響き決勝戦の幕をあけた。しかし唐突な試合の開始に、皆ほうけていた。最初に動き始めたのはジュリアだった。「ニードルレイン」ヒロキに水の針が襲いかかる。「はっ試合開始か」やっと試合が始まったことを理解したヒロキは、すんでのところでジュリアの攻撃をかわす。しかし、全てはかわしきれずニードルレインがヒロキの肩をえぐる。「ぐぁあーー」ヒロキにとてつもない痛みが襲いかかる。ヒロキは傷を炎で塞ぎ出血を止めた。「くっそ完全に油断してた」ヒロキは深い傷を負ったものの何とか腕は動かせることが出来た。「ファイヤーアロー」こっちに走って追撃しようとしていたジュリアを牽制し体制を立て直す。ファイヤーアローを避けるように後ろに飛び退いたジュリアは水の刃を飛ばしてきた。「アクアカッター」「ファイヤーウォール」それをヒロキは炎の壁で打ち消した。お互い間合いを取り相手の様子を伺った。「肩凄い傷じゃないリタイアしてくれてもいいんだよ?」「何言ってんだよこっからが楽しくなるんだろ」「楽しく?意味が分からないわね」「そっかこれを楽しいって思えないなんて損してるぜお前」「楽しい訳ないでしょ」「ジェットアクア」ジュリアが放った超高速の水がヒロキの胸を撃ち抜く!!「ふんっ私の勝ちみたいね」胸を撃ち抜かれたヒロキは地面に倒れ炎になって霧散した。「ファイヤーフィスト」背中から聞こえた声に振り向こうとしたジュリアは背中からのとてつもない衝撃に吹っ飛ばされる。「ガハッ」「ど、どうして胸を撃ち抜いた筈なのに何で後ろにいるのよ」「忍法変わり身の術なんちゃって」ジュリアの問いに飄々とヒロキは答えた。「どう?面白いでしょこれ」「ふざけんじゃないわよジェットアクア」「ざーんねんこっちだよー」再びヒロキがいたところには霧散した炎が残るだけだった。「ジェットアクア」「はっずれー」「ジェットアクア」「うーんちょっと惜しいなー」観客はこの時思った、(うっぜー)と。「次はもっと難しくなるよー」「フレイムアバター」と、唱えた。するとヒロキが二人になった。「「じゃじゃーんこれが分身の術でーす。さらに行くよー」」「「フレイムアバター」」二人が4人になった。「「「「フレイムアバター」」」」4人が8人になった。「僕が本物だよー」「いや僕だよ」「違うよこっちだよー」「ほーら僕だよー」「本物は僕だよー」「僕は違うよ」「いや本物はあいつだよ」「僕が本物に決まってるじゃん」「うっとうしいほど増えてるし気色わりーな」「うわーヒロキがいっぱいだー」と、サキは喜んでいた。「「「「「「「「さて本物があんたに分かるかな?」」」」」」」」「増えたなら一気に消すまでよ」「グランドガイザー」そういいながらジュリアは地面に手をついた。すると至る所から水がものすごい勢いで地面から吹き出した。辺り一面を水の柱が埋めつくし逃げ場は無いように思われた。「これはさすがに良けれないでしょ、フフ私の勝ちね」「それはどうかなー?」上空からヒロキの声が聞こえて来た。それに釣られるように観客は皆上を向いた。すると水の柱が届かない程の高さにヒロキは立っていた。「喰らえーフレイムメテオー」遥か上空からヒロキはジュリアに向けて突っ込んだ。とてつもない音を立てジュリアを中心に地面が陥没し土煙が二人を包み込んだ。大きく窪んだコロシアムの中にヒロキはひとり立っていた。「勝者ヒロキー」

「サキ次はお前の番だ決勝本戦で待ってるぞ」そう言ってヒロキはサキの試合を見ずに宿へ帰ってしまった。そしてサキは難なくダイチに勝ったのだった。続く

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炎の異世界魔道士 @Kaihara

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