もやの透かし方

 『待つのと待たされるのと、辛いのはどっちかねえ』……太宰治がそんな台詞を残している。葬式や法事は死者ではなく生者の安寧の為に行うのだという中禅寺 秋彦氏(京極堂シリーズ、講談社、敬称略)の台詞も踏まえると、本作の主人公が抱える苦悩が間接的に想像できる。
 また、おっちゃんの言葉が少しずつ主人公の心に染み入る様子が活写されており、舞台背景と相まって強く印象に残った。この上は、教壇で多くの生徒達におっちゃんから受け継いだ気持ちを伝えて欲しい。