第4話 新年

それから年末の慌ただしさに流され、あっという間に大晦日になった。

テレビから流れてくる音楽に年の瀬を感じつつメーラーを起動する。


(あと少しで新年だから今から打っておこう)


新年の挨拶と旧年中の謝辞を打っていく。

なんとなくそわそわして落ち着かなくなった。

こんなメールじゃ嫌だろうか、一方通行になって終わりじゃないか、などと悪い方向に思考が向いていく。

時は誰を待つこともなく進む。

いよいよ日付が変わってメールを送った。

返ってくるか不安で携帯の画面ばかり見つめる。

自分は馬鹿なんじゃないか、と思いつつ不安に押し潰されそうな自分もいた。

するとメールの着信音が鳴る。

急いで開くと彼女からの返事だった。


『あけましておめでとうございます!

先輩に先、越されちゃいました(笑)

今年も先輩と色んなことができることを楽しみにしてますo(^o^)o

初詣、一緒に行きませんか?』


新年早々、夢心地になりながら返事を打つ。


『届いて良かった~

今年も色んなことしようね!

初詣は何処に行く?』


送信ボタンを押して一息つく。

心の片隅ではうきうきとしていた。

つまらない正月が一気に色付いたように思った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る