第2話 互いの家と初めての感覚

スピーチコンテストから程なくして会うことになった。


私は珍しく精一杯のお洒落をして出掛けた。

制服とは違った印象の彼女は淡い色使いの服に身を包んで私を待っていた。


「ごめんね、待った?」


「全然ですよ!先輩、行きましょう!」


ただお茶をするくらいのことなのに妙に嬉しくて浮き足立った心持ちがしていた。

喫茶店に入って席に着くと色々な話をした。


「言わなきゃって思ってたから言うね?私、虐待されて育ってきて普通の家庭がわからないの。それに外出も自由にできないの」


私はどうしてもそれを言わなければならなかった。

どんなに出掛ける約束をしても親の機嫌次第では土壇場で断らなければならない時もあるから。


「そうだったんですか…私にできることがあったら言ってくださいね?」


こんな話をしたのに彼女は嫌な顔1つせずにそう言ってくれたのだ。

そして、彼女もまた家族の話をした。


「私の家族も歪んでるんです」


切々と語る彼女に胸が痛んだ。

私より何倍も真面目に真剣に問題に向き合っていた。


「私には聞くことくらいしかできないかもしれないけど、何かあったら言って?もし、逃げたくなったら私のところに来れば良いよ。一緒に逃げるから」


その時の彼女ははにかんだように笑って頷いてくれた。

何に変えても彼女を救いたかった。

自己満足かもしれない。

それでも家族に痛め付けられる辛さや苦しさ、悲しみを知っているから、そんな思いをして欲しくなかった。

何故だか彼女には幸せになって欲しいと思えた。


それぞれの家路につく。

帰り道、私はどうしようもなく彼女が気になって仕方なかった。


(もしかしたら、好きなのかも…?)


なんて思いつつメールを打った。


『今日はありがとう!また会おうね(*^^*)』


送ってからも彼女のことが頭から離れることはなかった。

そしてこの時はまだ、気の迷いだと思っていた。

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