第5話 片桐家の正月

毎年、同じことを繰り返す正月。

家の神棚と仏壇に手を合わせ新年の挨拶をする。

家族五人分の雑煮を私が作り、供えてから食べるのだが、祖父母以外は“ありがとう”の一言も褒め言葉もない。

食べ終えて片付けが終わり頃合いを見計らって初詣のことを切り出し、祖母の援護射撃も受けながらなんとか父親を説き伏せて初詣に行けることになった。

その分だけ両親が面倒なことを起こすのはわかっていたが、そんなことはどうでもよかった。

何を着ていくか悩んでいると普段は無関心の母親から声が掛かる。


「着物でも着たら?」


「着物コートないから着られない」


「ショール羽織ればいいじゃないの」


「私のショールは行方知れずでしょ」


本当は知っている。

母親が勝手に持ち出したのだ。

その後、母親は我が物顔で使っている。

そんなもの誰が使うか。


「じゃあ仕方ないか」


「そうだね」


こうして洋服を見繕って家を出た。

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5年目の片想い 橘蒼衣 @hollyhock_aoi

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