アネモネ


また、ドアが叩かれる


「…どうぞ」


「うっとり」が「がっかり」に壊されないよう、冷えた両手に柔らかく握りしめて、

「この音は少し違うかもね」

なんて、舞い上がりそうな心に「じっくり」を被せて大人しくさせる。


ドアが開く


か細い隙間から覗くつま先が

箱の中の猫の生死を決めてしまう前に

深く、

吸い込んだ空気

春の花の香りが混じる







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詩集:ティコの灯台(セレクション) 入透 @iris96

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