second story

「あ、いたいた。捜したんだぞ」

この声は.......まさか

「父さん.......」

「おーー桜か。もうそんな時期だな」

父は桜を見ながら何か思い出しているようだった。

隣から見る父の横顔は綺麗だった。

こんな綺麗な横顔を見たら誰も惚れないわけがない。

「ん?何か俺の顔に付いているか?」

僕が父をずっと見ていたから、父が気づいたようだ。

「何にもついてない。それより何考えてたの?」

父に言った瞬間。

父は僕を見て驚いたが直ぐに笑った。

「なんで笑うんだよ」

「お前は、昔から感鋭いな。お前の感鋭さには負けるよ」

そう言いながら、笑顔で僕の方を見た。

僕はその笑顔にキュンとしてしまった。

そんなことも顔に出さず。

「で、何の用?」

そう言うと、父は顔を渋めた。

何かあったんだろうか。

そう、考えていると.......

「奏大、何処か休憩をとれるところに行こう」

そう言って、父は歩き出した。

中々、僕が歩き始めないので父は、僕の手を引っ張って来た。

「何するんだよ。おかしいだろ。男同士で」

勿論、おかしい。

でも、少しだけでも手を繋ぎたかったのは嘘ではない。

そう僕が言うと。

「いいじゃないか!付き合ってもいないんだぞ」

と、笑いながら僕に言ってきた。

「そうだよね.......」

と、僕も作り笑顔で返した。

でも、正直悲しかった。

『付き合ってない』と言われた時。

付き合えないんだと自覚した時、涙が出そうだった。

そう思いながら歩いて、父が。

「ここにしよう。疲れただろ」

そう僕に言って店に入った。

僕も急いであとを追った。

入ってみると、小ぢんまりした喫茶店だった。

老夫婦が切り盛りをしているみたいだ。

「いらっしゃいませ」

と、笑顔で迎えてくれたお婆さん。

「好きなところにどうぞ」

と、言われ父は1番奥の1番端の席に座った。

僕もしぶしぶ座ったが。

「父さん、こんなに遠くでお婆さん疲れないかな。もう少し、お婆さんのこと考えてやりなよ。可哀想じゃん」

と、僕が言うと。

「後で謝っておこう」

父が言った。

「ご注文はどうしますか?」

とお婆さんが注文を聞きに来た。

「僕はコーヒーを。父さんは」

「俺もコーヒーで」

「はい、分かりました」

と、笑顔で対応してくれるお婆さん。

「すいません、うちの父が遠くの席を選んでしまって.......」

そう、僕が謝罪すると。

「大丈夫ですよ」

と、笑いながら言ってくれた。

「では、ごゆっくり.......」

と、お婆さんが戻って言ったところで。

父が切り出した。

「奏大、大事な話があるんだ」

「何.......?」

「父さんたちな.......離婚するんだ」

「.......えっ」

り、離婚!?

「えーーーーっ」

ビックリして大声を出してしまった。

「馬鹿!声を抑えろ」

「ごめん」

お婆さんにも謝った。

「けど、なんで離婚するの?」

そうだ。あんなに仲が良かったのに。

「母さんが、愛人を作ったんだ。その人と結婚すると言い出して」

はっ.......愛人!?

「母さんに愛人なんていたの!?」

父は顔を渋めながらも頷いた。

「なんで!母さんは父さんのことが好きだったんでしょ?」

あんなにラブラブだったのに。

「俺も分からない。ただ、1つだけなら原因は分かる」

「何、原因って」

「性行為だよ」

その時、僕はコーヒーを飲んでいたため、驚きが隠せずコーヒーを吹き出してしまった。

「ごめん!びっくりして。かかってない?」

「ああ」

僕は、お婆さんにタオルを貰って拭いた。

拭き終わり、自分で洗ってお婆さんにお礼を言って返した。

「ていうか、その原因おかしくない?」

何がなんでもおかしい。

「実はな.......父さんはゲイなんだよ」

「.......えっ」

父がゲイ.......?

「本当に.......?」

「本当だ.......」

じゃあ、なんで母さんと付き合ったんだ.......?

「母さんと結婚したのはなんで?」

「母さんは令嬢だから俺は反抗できなかったんだ」

そうなんだ.......なら.......

「なら、今好きな人はいる?」

僕はそれが知りたかった。

ゲイだと知った僕は嬉しかったけど・・・

もし、父が好きな人がいるとなると意味がない。

「いるよ」

えっ.......

「いるの.......?」

「その人とは両思いなの?」

「それは分からない」

「そうなんだ.......」

その言葉を聞いた瞬間。

僕は決めた。

自分の気持ちを一生、封印しようと。

そんなことを一切顔に出さず、僕は。

「応援するよ」

と、愛想良く笑顔で返した。

「そうか!ありがとう」

また、いつもの父に戻った。

これで終わりかと思った自分。

「そうだ。奏大、今日から2人で住むことになったぞ」

「はっ!?」

今、何て言った?

「一緒に住む!?」

「そうだ。多分、もう引越しは終わったはずだ」

なんでそうなる?

「何で?寮は?」

そこだ。僕は寮が良かった。

寮だったら直音もいるし、父で性処理する事も出来るのに.......。

「金を払っていたのは母さんだ。今の俺にはそんな金はない」

と、言われた。

それもそうだ。

母さんは大手企業の令嬢だったのだから。

その母さんがいなくなった今。

そんな金はない。

一人で溜め息をしていると。

「よし!帰るぞ、奏大」

と、支払いを終えた父が言った。

『ありがとうございました』

そう、おばあさんが言ってくれた。

僕も会釈で返した。

外に出ると、真っ赤な夕日が出ていた。

そんな夕日に向かって、父は俺らの新しい家に!と張り切りながら歩きだした。

「ほら、行くぞ」

「うん!」


僕は1ついい事を神様にもらった気がする。

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片思いで終わりたくない! 葉月彩夏 @A-YA-KA

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