片思いで終わりたくない!
葉月彩夏
First story
「あ、桜だ」
僕は18年目の春を迎えた。
「もう1年経ったんだな・・・」
1年間は短いようで長い1年だった。
思い返せば一年前。
僕は教師になる為に、教育学部のある一流大学に進学したかった。
でも、その思いは一瞬で崩れ去った。
僕は強制的に音大に進学になったのだ。
自分自身、こうなる事は予想はしてたが、まさかこんなことになるとは。
僕の両親は音楽に力を入れて僕を育ててきた。
その成果か、弦楽器、打楽器、金管楽器を吹けるようになった。
木管楽器は、自分自身あまり興味が無かったのと、金管楽器と一緒は駄目だと両親に言われ出来なかったからだ。
唇の形が違う為、やってはいけないらしい。
自分もこれには納得した。
そんなこんなで半年が過ぎた頃、授業中に毎回先生達が覗きにやって来るようになった。
なんでだろうと思い、休憩時間に友達の直音(なおと)に聞いた。正確には、佐久間直音(さくまなおと)。
直音にも“音”がついている。
それが縁で今は仲良しなのだ。
「ねえねえ、直音」
「ん。どうした?」
相変わらず、真面目に勉強しているのが凄い尊敬する。
自分も勉強はする。
だだ、彼ほどはしない。
周囲が引くほど勉強熱心な為、時々話を聞いているか不安な時があるんだけど。
「毎回、先生達が僕の授業を覗いて来るんだけど・・・。なんでか分かる?」
僕が彼に聞いた途端、直音が笑った。
「なんで笑うんだよ!」
真剣に聞いているのに。
「奏大、わかんないのかよ!」
相変わらず、大声で笑っている直音。
「いい加減にしろよ!怒るぞ」
「ごめんごめん。話すって」
やっと、直音は笑いを止めた。
「先生達、お前の才能を見て見学する為に覗き見してるんだって」
そう言うと、また直音は勉強を始めた。
「そうなんだ。ありがと!」
そう言って僕は、教室に戻った。
自分でも、思う。出来すぎだと。
「やっぱりこれで良かったのかな.......」
僕は、まだ教師という夢を捨ててはいない。
ただ、両親のことを思うと退学出来ない。
「父さんに嫌われるしな.......絶対」
僕の父は凄く厳しい。特に勉強は。
中学時代は反抗期で父には物を投げて怪我をさせたぐらいだからな。
自分でも、反省してる。
そこから、父のことを憧れるようになった。
時には優しく接してくれて、勉強も教えてくれて.......。
そんな父に僕は.......恋をした。
自分の気持ちに気がついたのは高校を卒業した頃。
禁断の恋だし、実の父、血も繋がってる。
恋をしてはいけないのに、そんな感情を持ってはいけないのに。
なのに.......なのに.......。
そう、悩み初めてあっという間の1年間。
高校を卒業して父と写真を撮った桜を今、見ている。
ここからまた1年が過ぎていく。
この繰り返し。
僕の父に対する恋愛感情も一年を過ぎたら無くなるのだろうか。
それとも.......。
でも、僕はこの思いを父に伝える事はしない。
心のどこかで自分が傷つきたくない思いがあるからだろうか。
父は母の事を愛していると思う。
だからこそ、この関係を壊したくない。
だけど、母から父を奪った時、どんな思いをするのだろうか・・・?
でも.......
誰も傷つかないなら父を奪いたい。
欲しい、父が。
禁断の恋だと分かってる、だけど。
好きになってしまったから.......
神様、この恋叶えてくれませんか.......?
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