就ドル

ジヴニー

第1話 アイドルを目指すということ

「ゆい、大きくなったらぜったいにアイドルになる!」


カフェの中、リクルートスーツ姿でエントリーシートを書きながら、そんな幼少期の記憶をぼんやりと浮かべていた。


私、清水唯は都内の有名大学に通う大学4年生だ。今は就活の真っ只中で、今日も面接を終えたその足で行きつけのカフェに向かい、次の事務所に提出するエントリーシートを書いている。


私の志望業種はアイドル業。2040年の今となっては普通のことだが、30年前までは、わざわざアイドルになるために就活をするなんて考えられなかったことらしい。


私が生まれて物心がついた頃には、テレビをつけると、必ずと言っていいほどアイドルが出ていて、CDの売り上げや、曲のダウンロード数などの上位はアイドルグループが占めていた。


そんな環境で育ったせいか、私は、アイドルは歴とした職業だと思っている。しかし、どうやら私の両親は違うらしい。


私の父は大手製薬会社に勤めており、母も同じ会社に勤めていたが、父と結婚し、私を妊娠した時に退社した。製薬会社に勤めるくらいだ、2人とも大がつくほどの堅物である。世代の違いのせいもあるかもしれないが、2人は私がアイドルになることにひどく反対した。


「アイドル文化なんて一過性のものだ!」

「お前をアイドルにするために大学に通わせたわけじゃない!」

就活を始めてから何度も聞いた台詞である。

果たして30年も続く文化が一過性のものなのだろうか、と毎回思うが、それを言えば、喧嘩になると分かっていたので、私は口には出さず、心の中だけで呟くようにしていた。


大学の友人にもアイドル志望の子がいるが、私と同様に親には反対されたらしい。


私も友人も、そんな親の反対を押し切り、アイドルを第一志望にして就活に臨むことにした。


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就ドル ジヴニー @k0hey27182

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