第2話

 家出。アニメの世界のなかだけの話だと思っていた言葉に、ピリッと背すじがのびる。


「それは大変なミッションだ」


「そうだ、これはミッションだ。ほらケンキ、ミッションの計画を立てよう」


 ちょっとカッコイイかなと思って言っただけの「ミッション」だけれど、2人とも気に入ったみたいだ。


 ぼくらはミッションを成功させるために、頭を寄せてヒソヒソと話し合った。


 ケンキの話によれば、お母さんとケンカしたらしい。ケンキの家にはもうすぐ双子の赤ちゃんが生まれる。今の家では狭いから、もっと広い家に引っ越すと言われたと、ケンキはボソボソ教えてくれた。


「でも引っ越したら、転校するかもしれないんだ。オレはそんなの嫌だって言ったけど、お母さんが赤ちゃんのためだって……。だからオレ、怒っちゃって、赤ちゃんなんかいらないって言っちゃって、そのまま飛び出してきて……」


 ケンキの声はどんどん元気がなくなる。コウタは「そんなの、お母さんひどいよ!」とケンキの分まで怒っている。ぼくは寂しい気持ちをぐっと飲み込んで、どうすればこのミッションが完了するかを考えていた。


「じゃあこうしよう、お母さんがあやまってくれるまで、ここでジキューセンするんだ」


 ジキューセン。お父さんが好きな警察のドラマでよく聞くセリフ。ビルに立てこもる犯人と同じで、ぼくらもここに立てこもればいい。


 ケンキもコウタも、目を輝かせたのが分かった。

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