第14話 ライラたちの休日

ライラたちに久々の休日が訪れた。

情勢のほうは日を追うごとに悪化しているらしく、近々、大きな戦が起こるのではないか、と言われている。

小国に過ぎなかったフルートリー帝国が力をつけてきたことを受けて、隣国の国々は同盟を結んでいるとも聞く。ウィルター公国の惨禍が広く伝わったという。

だというのに...、城下町は今日も活気にあふれている。

ライラは普段ならば城下町に出かけることはない。髪色やエルフの特徴が目立ち、騒ぎになるからだ。

今日、城下町に来たのはセラとチセを案内しようと考えたからだった。

三人とも目立つ髪色をしているため、フードで隠している。

石造りの街並みに、食料や雑貨、洋服などの露店が並び、多くの人が行きかう。普段は目立つため苦手だが、フードで隠すと誰もライラたちに気が付かない。多くの人が露店で買い物をしながら、道を行きかう。

日が高く、気持ちのいい快晴だ。ざわざわとした喧噪もどこか心地いい。

もし、目立つ容姿でなかったら...と思ってしまう。

街に出るなり、セラは好きなところに勝手にいってしまう。あっという間にチセと二人になってしまった。チセと顔を見合わせて、苦笑した。

「チセ様はいかなくてもよいのですか?」

「チセとお呼びください。私はいいです。」

「では、チセ。何か見たいものはありますか?」

「特にありません。」

意外な返事だった。もしかして嫌われているのだろうか。しかし、その表情から拒絶や嫌悪は感じられない。

「では、一緒に見て回りましょうか。」

「はい。」

チセと一緒に露店を見て回る。果物、パン、お菓子、雑貨、アクセサリー、花、本。

チセは、薬を買っただけだったが、楽しそうに露店を眺めていた。

気が付くと、セラがクッキーを銜えながら現れた。手にもクッキーの袋をたくさん持っている。

「それ、全部買ったのですか?」

「そうだ。」

セラは当然のように答える。

「全部食べられますか?」

「もちろん。全部私のだ。」

チセと一緒に露店でサンドウィッチを買って食べた。セラはその間もクッキーを食べていた。

あたりが暗くなりだした頃、兵団に帰る。鮮やかなオレンジ色の空がいつもより一際、濃くなったように感じた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

パラレルワールド・クロニクル @Siharu486

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る